日本科学者会議山口支部ニュース 第167号(通算)(2013年4月1日)
つ う し ん
WEB版 2017 復刻

  

福島第一原発のメルトダウンをめぐって

増山博行(山口支部常任幹事)

 NHKの特集番組、NHKスペシャルはいくつもの東日本大震災関連の番組を放映している。なかでも福島第一原発がメルトダウンに至った問題点については、一昨年12月、昨年7月、そして今年3月10日の3回にわたり、事故調査報告書や東京電力が認めてこなかったことを掘り起こして、事故の拡大を決定づけた核心的なこととして報じている。原発事故全体は極めて多くの事象・問題点を孕んでいるため、ピンポイント的に核心を突くことは事故の本質を総合的に論ずる上ではもの足らない点もあるが、1時間弱の番組ではいたしかたないだろう。NHKスペシャルの3回の番組を総合して、メルトダウンを早めた要因を紹介する。
 1号機 3月11日14:46の地震により外部電源を失い、代替のディゼル発電による交流電源も51分後の津波の到来で失われた。さらに非常用直流電源(バッテリー)も冠水し、わずかな直流電源のみとなった。非常用冷却装置(イソコン)は電磁弁を開けておけば、それ以外に電源を必要とせず、8時間は冷却が可能だったが、バッテリー水没時に弁が閉まっていることを確認できず、冷却を継続することができなかった。40年間、イソコンを作動させた経験が無いことが災いし、イソコン停止に気づくチャンスを2度3度逸した。津波到来から約8時間で原子炉はメルトダウンし、発生した水素により約24時間後に建屋上部が水素爆発、その後の2,3号機の冷却作業にも支障となった。
 3号機 津波到来時にバッテリーは水没せず、1日半ほど非常用冷却系を作動させていた。ところがバッテリーが枯渇して冷却系は停止した。その後、非常手段として消防車による代替注水を行った。しかし、注水量の半分以上が原子炉には入らずに復水器へと漏水、ついに冷却水が失われ、原子炉はメルトダウン、3月14日の11:01に水素爆発に至った。
 2号機 当初は非常用冷却系が作動しているか確認できず、一番危険な状態と考えられていたが、実際は作動していた。しかし、3号機の爆発2時間半後に冷却装置が停止した。その後、3号機のように注水しようとしたが減圧弁が開かず、そのため格納容器の圧力が上昇したのでベントしようとしたがこれもできず、ついに3月15日の6時過ぎ、格納容器下部で容器が破損し、大量の放射性物質を外部に放出することになった。地震による配管の損傷で、ベント弁を開けるためのガス圧がリークしていたと思われる。また、過酷事故では減圧弁の作動に問題が生じうる。
 アメリカの原発ではイソコンの動作テストを数年毎に行っており、作動すれば「ブタの鼻」から猛烈に蒸気を吹き出すことは原発で働く者は皆知っている。が、わが国ではイソコンを作動したことのある現役運転員はいなかった。消防車による代替注水も実地にやったことはなく、漏水があって原子炉の水位が上がっていないことは吉田所長や武藤副社長も認識していたが、東京電力はなす術がなかった。予備のバッテリーは50km離れた小浜の備蓄センターまでは届いたが、それから先の立ち入り制限区域に運ぶ手段が確保されていなかった。一旦、原子炉が高温高圧になると様々な機器が不具合を起こすが、過酷事故を想定した対策はとられていなかった・・・・・。
 NHKスペシャルでは、事故を拡大させていった様々なトラブルの原因解明をおざなりにして、再稼働に走る電力会社と政府の対応を厳しく問うものとなっている。この番組から読み取れることの詳細は、下記のJSA平川分会(山口大学吉田キャンパス)の学習会で報告の予定である。

平川分会の集い 4月24日(水)12:00〜12:45  学外からも参加自由です
 山口大学吉田キャンパス内(決まり次第「支部事務局から」に記載のホームページでお知らせします) 話題提供者 増山博行 「福島第一のメルトダウンは避けられたか」


会費納入のお願い

 同封の振込用紙で2012年度までの会費を納入ください。また、出来れば2013年度の会費の前納にご協力ください。(平川分会の会員は別途、集めます)
   現行の会費   正会員 11,400円/年
           学生会員および年金生活であることを申し出た者 7,200円/年
 会費のうち7,200円は科学者会議の本部へ納め、機関紙「日本の科学者」が支部あてに送られてきます。個人会員には山口支部事務局で個別に郵送しているので、年間720円の送料がかかります。そのため7,200円の郵送会員には赤字会計となっています。カンパを含んで、8,000円/年の納入をお願いします。
 本来、会計報告や年度活動計画案を提示したうえで支部会費をお願いすべきでしょうが、間に合いません。事務局で近々に報告できるよう、鋭意努力いたします。


支部活動報告
 分会・個人のJSA活動をつうしんで紹介しますので支部事務局までお知らせください。


支部事務局から
 前号のつうしんで3つの提案をしておりました。
@ メールアドレス、専門領域(担当できる講演題目)を事務局にお知らせ下さること。
A メールあるいはwebページで情報を迅速に交換すること。
B 支部独自の公開講演会を開催し、参加の科学者へ日本科学者会議への加入を訴えること。
 この1番目については、新入会員から情報提供がありましたが、他の会員からはほとんど連絡がありません。支部の独自企画についてお知らせするため、メールアドレスは是非、お知らせ下さい。
 2番目のwebページですが、つうしん編集人のブログの「ブログ紹介」から暫定的なページへのリンクを張りました。支部の正式なホームページが立ち上がるまでの暫定的なページ(編集人の個人的なホームページ)であることをご理解ください。なお、山口支部の内部資料はパスワード付のpdfファイルとなっております。(パスワードは ********** )
 3番目の項目で、会員以外の方を講師に招くには支部財政の健全な運用が不可欠であることが分かりました。会費前納へのご協力(詳細は次号で提案)をお願いします。当面は財政的負担がかからない、分会単位の集いを企画しませんか。

JSA山口支部事務局
   〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
  Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union@ma4.seikyou.ne.jp

もどる