日本科学者会議山口支部ニュース 第169号(通算)(2013年10月1日)
つ う し ん
WEB版 2017 復刻

  

「原子力発電問題全国シンポジウムin福島」の概要報告(前編)

吉村 高男 (全国幹事)

 福島第1原発周辺の地下を流れている地下水が汚染され、海に約400(t/日)流れ出ていることや、高レベル汚染水を蓄えていた地上タンクから汚染水の漏洩が発覚し、福島第1原発における新たな話題で深刻なムードが漂う中で、日本科学者会議原子力問題研究委員会主催による「原子力発電問題全国シンポジウムin福島−福島原発事故・災害、2年半後の現実と打開の展望−」が、8月24・25日に、福島大学を会場にして開催された。1日目は、4つの基調講演と「福島原発事故の評価をめぐって」と題したシンポジウムがあった。2日目は、第1分科会「除染と廃棄物処理をめぐって」と第2分科会「脱原発への道」に分かれて、それぞれの講演に基づいた議論が活発に行われた。
 さらに、筆者は今回「シンチレーション・サーベイ・メーター」を携行し、飛行機の機内や東北新幹線内に於ける空間放射線量率の変化をはじめ、福島市と郡山市、及び福島大学構内の空間放射線量率の計測を行ったので、それらについても簡単に報告をする。
 原発シンポ1日目の基調講演は、「事故原因はどこまで解明されたか」と題して、舘野淳氏がまず講演を行った。今回の原発災害は、大地震と大津波のため、すべての交流電源が失われてしまうという「ステーション・ブラックアウト」から始まった。電源不要の冷却装置については、1号機にはIC(非常用復水器)があり、2・3号機には炉内の蒸気でタービンを駆動してポンプを動かすRCIC(隔離時冷却系)及びHPCI(高圧注水系)があった。1号機では津波が来る前に運転員がICの弁の開閉を繰り返しており、津波襲来時にはICの弁は閉じられた状態で、以後使用不能となり、1号機は真っ先の大震災発生当日の3月11日に炉心溶融が起こった。3号機はRCICが故障のため、HPCIが自動で立ち上がったが、HPCIは容量が大きくすぐ停止してしまう。再稼働のためにはバッテリーを必要とするが不足しており、ディーゼル駆動の注水ポンプに切り替えようとしたが、炉内の圧力が高く失敗し、3月13日に炉心溶融が起こったと考えられている。2号機のRCICは当初は働いていたが、未だに原因不明の停止で、3月14日に炉心溶融が起こったと考えられている。
 よく知られているように、燃料棒の被覆管(ジルカロイ)はジルコニウム合金であるが、水と高温(1000゜C付近)で反応して水素を発生する。発生した水素は配管の破れなどを伝わって、建屋上部に溜まり、爆発範囲(空気中で4〜75%濃度)であれば、電気火花や高温物体に触れた場合に爆発を起こす。このようにして、1号機と3号機は水素爆発が起きて建屋が崩壊した。2号機では建屋の上部の窓が開いたため、水素が溜まらず水素爆発は起きなかった。しかしながら、格納容器から圧力抑制室に通じる配管付近での爆発については未だに未解明である。最大のヒューマンファクターは危険な軽水炉の大量建設を許し、規制をおざなりにした「産官学癒着体制」に問題があり、軽水炉は明確な欠陥商品であると結ばれた。
 次に、清水修二氏が「チェルノブイリと福島」と題して講演された。大事故を防ぐということではチェルノブイリ事故を教訓にできなかった我々であるが、災害対応や復興過程でどれだけそれを教訓にできるかが問われている。チェルノブイリ原発4号機(RBMK)は格納容器を持たず、2度の爆発で圧力容器の蓋は200mも飛び完全に青天井となった。さらに、減速材に黒鉛を用いており、これに火がついて火災が起こり10日間燃え続けた。多くの放射性核種が気化し、放射性物質が数千m上空まで舞い上がり、山地がほとんどない地形であることも加わり、汚染が広範囲にわたった。プルームがモスクワに到達しないように人工降雨対策も実施された。原子炉本体は「石棺」で囲まれたが5年後の1991年で約100°C、25年後の一昨年で37°Cと言われている。もともと水で冷却せず放置されている状態である。一方、福島事故における3つの原子炉はいずれも火災は起こっておらず、格納容器、圧力容器も原型を留めている。しかし、メルトダウンした核燃料が高温で冷却を必要とし、多量の高レベルの汚染水が出ており、その処理が重大な問題になっている。チェルノブイリの場合には、ベラルーシだけでも3万人の子どもが1000mSvを超える甲状腺被曝を受けたとされているが、福島事故の場合は多くて概ね30mSvという推計である。また、ベラルーシやモスクワでは、被災住民を元の場所に帰還することは政策目標になっておらず、土地が国有であることが主な背景にあり、社会主義的災害対策であることが日本と大きく異なる。チェルノブイリの教訓として、@健康被害の正確な実態把握、A風評被害・ストレス対策、B汚染地区の在り方、C廃炉の手法と溶融核燃料の処理・処分の方法D補償・賠償の在り方について提言された。
 (以下、次号に続く)

JSA山口支部総会議案

はじめに
 何年か前から支部活動は停滞気味である。本部との連絡や会誌配布は事務局を依嘱している山口大学教職員組合書記局を通じて行い、会費納入は会計幹事が滞りなく行っているという点では、事務局体制は維持している。しかし、総会を開催して活動報告や方針案を議論することが出来ず、幹事の持ち回り審議で役員を交代してきており、支部活動は役員の個人的な努力に委ねられてきているのが実情である。
 今回、支部の全会員に議案を送付し検討を経て、支部体制と活動方針の確立を図るべく、総会(メールもしくは郵便での議決)を提案する。

議事
1.活動報告
 2011年3月の東北地方太平洋沖地震とそれに引き続く東電福島第一原発事故は、自然防災、原発と放射能問題、原子力・エネルギー問題に関して、科学者・技術者に大きな課題を投げかけた。山口支部においても、原発事故がどうなっているのか、どうなるのか、放射能汚染への対処と計測方法について、さらに原発に頼らないエネルギーについて、質問や解説の依頼が寄せられた。かっては山口支部でも原発問題研究委員会が活動していたが、公害問題研究委員会などを含めて、近年、支部の研究委員会は存続していない状況であったので、専ら何名かの会員が個人的に対応するにとどまった。その活動の一部は「支部つうしん 166号(2013.1.1)」にまとめられている。
 全国あるいは中国地方区の活動への参加は専ら、選出された全国幹事、支部代表幹事および若干名の幹事の個人的活動によっている。但し、2012年9月に岡山で開催された第19回総合学術研究集会には山口支部から数名の参加があった。
 その他の支部の組織的活動は、会費徴収と会誌等の配布、「支部つうしん」の発行が主な内容であったが、事務を委託している山口大学教職員組合書記局を通じて全国との連絡は維持している。しかし、会員の退職に伴う退会で年々会員数が減少してきた。最盛期には200名近い会員がいたが、現在はその3分の1となり、かつ平均年齢も推定では50台まで上昇してきている。本部からは何度かシンポジウムの開催などが打診されたこともあったが、応えられないでいる。
 このような状況を打開すべく、2012年11月末に米田全国事務局長の来訪を機に、ミニ学習会を開催した。参加者は決して多くはなかったが、久方の支部企画となった。この経験は2013年4月から始まった「吉田キャンパス 科学のつどい」の企画に継承され、7月までに3回ほど開催している。また三好元代表幹事の逝去で発行体制が止まっていた「支部つうしん」の編集は増山会員が引き継ぎ、2013年1月以後は3カ月毎の発行となっている。
 若手の研究者への加入の働きかけも「つうしん」発行と並行して行われ、「支部つうしん 167号」で紹介されているように3,40代の3名の新規加入と、定年退職者の会員継続の申し出があり、2名ではあるが前年度より支部会員の増加となった。

2.会計報告
 数年来の報告を整理中であり、会計監査が行われ次第、報告するものとする。一部で退会者の未納があるようだが、支部活動費で相殺する形で経緯しており、平成25年春に山口県婦人研究者連絡会の活動費の残金として寄贈された金額が繰越金として2013年度活動費に算入できている。

3.役員体制
 支部代表幹事であった吉村会員は本部の中国地方担当の常任幹事に選ばれており、支部代表幹事は増山会員に交代する。事務局長は大和田会員が引き続き留任する。事務局の事務は山口大学教職員組合書記局に業務委託する。発送業務に加えて、会計業務も可能な限り委託する。
 その他、幹事を6名おき、それぞれの担当班・分会・地区はつぎの表のとおりとする。
    JSA全国幹事     吉村(山口福祉文化大学)
    山口支部代表幹事    増山(山口大学名誉教授)
    山口支部事務局長    大和田(山口大学)
    山口支部会計幹事    笠野(山口大学人文・理学部)
    支部幹事        田中(山口大学農学部)
                海野(山口大学教育学部)
                塚田(山口大学経済学部)
                森田(山口大学医・工学部および宇部地区)
                浜田(下関地区)
    事務局      山口大学教職員組合書記局

4.活動方針
 東電福島第一原発事故は「想定外」と称して備えを怠るという「原子力村」の決定的な過ちに起因する。これを見逃してきた科学者・技術者に対する国民の信頼を大きく損ねるものとなり、科学・技術のあり方への厳しい問いかけとなっている。また、昨年末の総選挙で成立した安倍政権は参議院選挙の勝利を踏まえて憲法改正や集団的自衛権行使・海外派兵を推し進めてくると考えられる。第2次世界大戦へ若者を送り出した反省の上に半世紀前に創設された日本科学者会議は一貫して軽水炉型原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた。平和と核エネルギー問題を中心に、科学・技術の総合的発展をはかる活動を強めなければならない。
 また、大学と研究機関の独法化の中で、科学・技術の発展が一層ゆがめられ、また科学者・技術者が主体的に研究を発展させる条件が劣悪になってきている。特に若い研究者の雇用が不安定化され、その地位が脅かされている。
こうした状況の中で、山口支部の活動の柱を次のように設定する。
 1)平和と民主主義を守るため憲法改正問題にとりくむ
 2)核エネルギー問題および自然エネルギーの研究支援にとりくむ
 3)会員同士さらに非会員との交流を広め、専門を越えた学術の総合的発展をめざす
 4)研究者の権利・地位の確立、特に若手研究者の処遇について支援を検討する
こうした取り組みの中で、若い会員の入会で支部活動の活性化をはかる。

5.予算
 年会費は次の通りとする(本部に納める会費は年7,200円)
    一般会員    11,400円(支部活動費4,200円を含む)
    退職会員    8,000円(支部活動費800円を含む)
    学生会員    7,200円(ただし、会誌等の郵送を希望する場合8,000円)
 会計年度は4月より3月とし、原則として1月末までの前納とする(会誌「日本の科学者」の購読者数の締切が2月末のため)
 2013年会計年度予算案
   収入 685,000(明細省略)
   支出 685,000(明細省略)

6.その他
  会員は事務局との連絡を迅速・円滑に行うため、努めてメールアドレス(インターネットで少なくとも1MBのファイル添付可能)を事務局と届け出てもらう。
  支部webページの安定的な開設の方策を探る。

 以上の議題について、3,4,5項目に関して承認するには○、不承認には×をつけて、郵送もしくはメールで、10月15日までに事務局長宛、送付願います。支部会員59名の過半数の30名以上の承認をもって、総会可決と致します。


山口大学 「吉田キャンパス科学のつどい」(第4回)の開催予定(学内外からの来聴歓迎)

 11月1日(金)17:45~ 教育学部C棟第3会議室「憲法改正と9条(仮題)」講師:松原准教授


JSA山口支部事務局
   〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
  Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union@ma4.seikyou.ne.jp

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