日本科学者会議山口支部ニュース 第173号(通算)(2015年2月1日)
つ う し ん
WEB版 2015-1-24
 
原爆投下70年、被爆者支援と核兵器廃絶にむけて山口から
〜 2015年 原水爆禁止世界大会 科学者会議の山口開催を成功させよう 〜
                         支部代表幹事
 山口県は広島・長崎に次いで人口当たり被爆者数は3番目に多い県であるとともに、福祉施設「ゆだ苑」が
半世紀近く原爆被爆者支援を行っています。また、県下の岩国では一時期、核持ち込みが取り沙汰された
米軍基地があり、基地拡充整備と駐留航空機の増強が進んでいる現実があります。昨夏、安倍首相の主導で
「解釈改憲」の閣議決定が行われ、これに基づく「集団的自衛権」行使と称して自衛隊を他国軍の傘下に
置いて参戦させようという動きが強まっています。
 再び核兵器の惨禍を地上にもたらさないため、悲惨な戦争の被害者にも加害者にもならないため、終戦70年
にあたり私たちは思いを強くせざるを得ません。
 原水爆禁止世界大会に際して科学者の集まりとしての科学者集会が始まったのは1987年のことです。昨年は
「核兵器なき世界 原発なき社会を福島から訴える」をテーマに福島市で開催されています。今年は山口での
開催を要請され、日本科学者会議山口支部では引き受けることを内諾しました。おりしも広島・長崎に原爆が
投下させて70年目を迎え、国連では核兵器不拡散条約(NPT)の運用再検討会議が行われようと
している重要な年、科学者会議の山口開催を成功させましょう。

科学のつどいの報告
「オゾンホール・地球温暖化 〜人為的環境変動の核心に科学で迫る〜」
 折々の自然および人文社会科学の話題を会員あるいは非会員に講演してもらい、会員相互・非会員・市民・
学生との交流を図る企画として、「科学のつどい」が2013年4月より山口大学吉田キャンパスにおいて、山口
大学教職員組合と共催されています。昨年12月24日にはその第7回目が「オゾンホール・地球温暖化 〜人為的
環境変動の核心に科学で迫る〜」というタイトルで理学部講義室にて開かれました。
 講師の九州大学名誉教授の宮原三郎さんは、中層および超高層大気力学の研究を40余年続けてこられ、2013年
にはその功績で日本気象学会の藤原賞を受賞されています。定年後、美祢市の田舎に移り住まれており、
縁あってお願いした講演を快く引き受けていただきました。以下、講演をかいつまんで報告します。

 自然環境をめぐる問題には有害物質による「公害」などと、人間の地上での活動に起因するグローバルな環境
変動とがある。後者に属するものには、フロンなどのオゾン破壊物質に起因するオゾンホールの出現と、
二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化の問題がある。このそれぞれについて科学的な考察を加える。
 オゾンホールは1982年10月にわが国の南極越冬隊員により発見された。高度12〜27kmの上空に濃くあるはずの
高濃度オゾンの領域が、南極の春先に著しく減少するのが1980年代から顕著になった。オゾンの減少が
続けば、人間をはじめ地表の生物に紫外線の害を及ぼす危険性がある。いろいろと調べられた結果、フロンが
紫外線で分解して放出された塩素が大きな原因であることが分かり、1980年代末から国際条約でフロンガス
の生産・排出規制がとられ、オゾンホールの拡大は止まっている。いったん破壊された環境が元に戻るのは時間が
かかり、1980年代初頭の状態に戻るのは2040〜2050年頃と予想されている。ともあれ、国際条約が有効に
機能して、問題が克服の方向に進んでいる。
 これに対して温室効果ガスによる地球温暖化は2014年12月のCOP20の会議でも排出量目標値を具体的に挙げるに
いたっていない。それどころか、地球温暖化に対しては懐疑説も根強い。確かに、数十万年の間には氷河期と
間氷期が繰り返されてきた。しかし、その自然の変動のスケールより遙かに急激に、大気中の二酸化炭素濃度が
上昇し、これに連動しての地表の平均気温上昇が最近2百年間に起こっている観測的事実がある。地表の熱は
赤外線の形で宇宙空間に放射されるが、二酸化炭素などによりこの赤外線が吸収され再び地表向きにも
輻射される
ことが温室効果となって、地球上の大半の地点で気温を上昇させている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
の2013年の報告によれば、有効な対策が講じられない場合、百年後には世界平均地上気温は4℃、
海面水位は0.6mの上昇が予測されており、人間社会へ深刻な影響が懸念される。
 オゾンホールの場合はフロンガスの使用規制が国際的に取り組まれてきている。温暖化に最も寄与するのは
二酸化炭素であり、排出規制を取らないと、人間社会だけでなく地球の生態系を破滅に向かわせる恐れがあることを
認識すべきである。

 宮原さんは講演の終わりで、自身が訪れたオーストリア・アルプスのパステルツェ氷河が急速に後退している
スライドを示しながら、温暖化ガスの対策の必要性を力説されていました。聴衆の数は10数名と多くはなかったが、
化学者からの専門的な質問もあり、有意義な講演会でした。

JSA中国地区会議の報告
 2014年度第2回の中国地区会議が12月20日、岡山で開催され、山口支部からは吉村全国幹事と増山支部代表幹事が
参加しました。
 会議には各支部および本部の米田事務局長らも参加し、全国常任幹事会の報告がありました。また、佐藤社会的
活動部長から原水禁世界大会科学者集会の説明がありました。中国地区の議題としては、今後の担当ローテーション
が次のように確認されました。
 
 年度	地区担当常幹	日本の科学者編集委員	中国シンポ担当県	   
 2011	広島	山口	鳥取			鳥取	   
 2012	山口	島根	鳥取			鳥取			   
 2013	島根	鳥取	岡山			岡山	   
 2014	鳥取	岡山	岡山			岡山			   
 2015	岡山	広島	広島			広島	   
 2016	広島	山口	広島			広島			   
 2017	山口	島根	山口			山口	   
				 
 最後に、各県から各支部の活動状況の報告がありました。その概要をメモしたものを事項毎にまとめて記します。
・クォータ制の導入
 岡山大・広島大: 来年度からクォータ制になり同時に60分授業になる。午前4コマ、午後4コマ。
	例えば、1回2コマ、週2回の授業で、1クォータに2単位取れる。教員は90分労働が120分
	労働になり、負担増。学生はサークル活動に制約。有無を言わさずに導入となった。時間割の
	縛りがきつくなり、広大総合科学部では教授会を開くのは学期の休みの時期のみかと言われている。
・年俸制
 広島大: 55歳以上には年俸に移れとのプレッシャー。1年契約で規則上はいつでも首を切れる。
	新規教員採用は人事権が役員会に移った。
 岡山大: 今年から新採用は全て年俸制。100%年俸制に移る計画。55歳以上は年俸制が有利と当局は
	宣伝している。
 鳥取大: 学長・理事から導入し、次に研究業績のある者に年俸制。将来的には100%導入
・学長選挙
 広島大: 5名の候補者の中から教育研究評議会が投票で3名に絞った。経営協議会も候補を出して、
	重複を除いて4名に対し、意向投票を行った後に、結果を公表せずに学長選考会議が1名を選んだ。
	ところが、選ばれた者が意向投票3位の者と漏れ伝わり、組合も学長選やり直せと声明している。
 島根大: 医学部出身の傲慢な現職学長に対して、1名の対立候補が擁立され、運動の結果、12月1日の
	意向投票で120票の差をつけ、学長が交代となる。
・学部長選考
 鳥取大: 今回から、学部は複数候補を出し、学長が面接して選ぶように変えられた
・支部活動
 島根: 2.11集会を計画している。島大九条の会の立て直しを図った。
 鳥取: 幹事会や学習会は定着している。4月よりサイエンスカフェとして日本の科学者の面白い論文の
	読み合わせをやっている。
 岡山: 真庭の天体望遠鏡が軍事利用に狙われている(某国のミサイルの検知)ことに対して、12.1に
	「よもやま話の会」で池内了氏を呼んで講演してもらった。
 広島: 大学講師を攻撃するヘイトスピーチに対する集会を12.12に成功させた。

その他の支部活動
 2014年10月以降の支部のその他の取り組み等は以下の通りです。
・上関原発の用地埋立禁止を求める住民訴訟を支援するカンパの取り組み(11~12月)
  28名から24,000円のカンパが集まり、住民訴訟原告や3.11県民集会など上関原発反対運動に提供しました
・「上関原発計画の現段階と諸問題」日本の科学者12月号に掲載
・原発をつくらせない山口県民の会 第6回役員会 12月26日 委員が出席
  15年3月21日 上関原発を建てさせない山口県民大集会(維新公園野外音楽堂にて)の成功に向けて
	(ポスター参照)
・NPT検討会議に向けての核兵器全面禁止アピール署名について山口折鶴の会に協力
・第8回科学のつどい「音楽をよむ 〜音楽におけるテキスト読解〜」
	講演者 池上 敏さん(山口大学教育学部教授)
	15年1月16日 山口大学教育学部音楽棟演奏講義室にて開催、参加者は十余名。
・原水禁世界大会科学者集会実行委員会準備会 1月31日開催

JSA山口支部総会議案の採択結果について
 前号172号(10月1日付)において、2013年度の活動報告、会計報告、2014年度支部役員、活動方針、予算案
を示し、郵送もしくはメールで採決を行った結果、5案件とも承認されました。

会費納入と異動届けのお願い
 年度末を迎え、2016年度の会費をお願いします。
  正会員  11,400 
  特別会員  8,000 (退職後、申し出により適用となるので、該当の方は手続きを)
また、異動のシーズンとなります。次の場合は、支部事務局までご連絡下さい。
 現住所・電話番号・メールアドレスが変更となる場合
 なお、事務局で把握している会員のメールアドレスは会員の7割弱にとどまっており、迅速な情報提供に支障を
生じております。是非、ご連絡頂けますようお願いします。

JSA山口支部事務局
   〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
  Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union@ma4.seikyou.ne.jp

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