日本科学者会議山口支部ニュース 第174号(通算)(2015年6月1日)
つ う し ん
WEB版 2015-6-11

 

原水爆禁止2015年世界大会・科学者会議in山口のメインテーマが決まる

 前号でお知らせした原水爆禁止2015年世界大会・科学者会議in山口の準備がすすみ、5月22日に実行委員会から1stサーキュラーが発表されました。以下、これを掲載します。なお、その後に決まった発表者名を追記しています。


◇実行委員長よびかけ

 広島・長崎の被爆から70年という節目の年に,「原水爆禁止2015年世界大会・科学者集会」(略称:科学者集会)が「核の脅威と被害のない世界を」をテーマに山口で開催されることになりました.1987年から始まった科学者集会は,原水爆禁止世界大会に付随する集会として,全国の都市を巡回して開かれてきました.
 人口比で被爆者が全国で3番目に多い山口県では,山口県原爆被害者団体協議会(山口県被団協)が単一の組織として活動を続け,また,山口県原爆被爆者支援センター「ゆだ苑」は原爆被爆者支援活動と平和活動を推進する法人組織として1968年設立以来,半世紀近く活動を続けています.被爆者数の高齢化による減少が進む中で,原水爆禁止運動と被爆の実相を伝える活動の継承が大きな課題となっています.
 我が国では,広島,長崎,ビキニ,そして福島で度重なるヒバク(被爆/被曝)を経験しながらも核廃絶へと踏み出すことなく,米国の「核」の下で原発の再稼働と核燃料サイクルの政策の継続が図られています.原発運転〜廃炉で生み出される大量の放射性廃棄物の処分法と処分地の決定には国民的合意が不可欠で,科学者の役割も問われています.
 被爆者のメッセージである核兵器の非人道性は世界的に共有され,定着しています.昨年は,国連の委員会で提案された「核の不使用声明」に155ヶ国が署名しました.今年は国連の核不拡散条約(NPT)再検討会議で発表された「核兵器の人道上の影響に関する共同声明」に日本を含む159もの国が賛同しましたが,その中には核兵器保有5ヶ国が含まれていません.一方,国際紛争に核兵器使用の準備をしていたという国の指導者の発言を考えると,核兵器の存在は人類の平和的生存と発展に対して大きな脅威となっていると言わざるを得ません.
 昨年7月,「集団的自衛権」行使容認の閣議決定がなされ,それに基づく「安保関連法案」が国会で審議されることになっています.憲法9条に基づいて「もう戦争をしない」とした国の「形」が大きく変えられようとしています.この厳しい展開の中で,山口県下では岩国基地の拡張と再編強化がなされています.
 科学者集会では,原水爆禁止運動に関わる課題のみならず,基地に関する諸問題と集団的自衛権に関わる課題についての報告も予定しています.
こうしたテーマに関心のある広汎な科学者,市民,学生の皆さん,「核のない,戦争のない,平和な世界」をめざして大いに語り合い学び合いましょう.様々な分野の皆さんの参加ならびにご支援をお願い申し上げます.
実行委員長 田澤輝武(山口支部)

◇集会コンセプト

 原水爆禁止運動は人類を核戦争・核兵器開発の脅威から解放し,平和で豊かな世界の実現を目指して活動を進めてきた.国連の場で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が行われる傍らでは国際紛争に核兵器使用をも辞さないとする大国指導者の発言があるなど,核兵器は地上すべての生物の存亡に関わり続けている.
 わが国では東日本大震災で重大な放射能汚染事故を経験し,汚染水処理・原発廃炉への見通しも立っていないにもかかわらず,原発の再稼動,建設と核燃料サイクル政策の継続が図られており,放射能事故のリスクが高まっていることは憂慮のいたりである.
 今回,科学者集会は人口比で3番目に被爆者が多く,また核攻撃能力を持つ米軍基地の再編強化が進められている山口県で開催される.原水爆禁止・被爆者救援運動の継承をはかり,戦争を全面的に放棄する憲法九条の理念を広める契機となることを期す.
  

◇プログラム概要 (詳細は2ndサーキュラーでお知らせします)

 1.集団的自衛権の深層――日米核同盟の果てに(纐纈 厚/山口大学)
 2.原爆と原発事故の放射能被曝の差異と共通点(岡本良治/日本科学者会議福岡支部)
 3.東北の放射能汚染と地域再建の課題(菅野偉男/完全賠償させる福島県北の会)
 4.山口の被爆者救援 ―― ゆだ苑の40余年の活動の軌跡(岩本 晋/ゆだ苑)
 5.岩国の基地拡張・配備再編の諸問題(吉岡光則/山口県平和委員会)
 6.民間人戦争被害に対する対策の歴史(井竿富雄/山口県立大学)
 7.核兵器廃絶への道 (外国からの報告)
 8.総合討論

◇集会の進め方

  分科会形式は取らず,すべて全体会で行います.
  「総合討論」での発言(原則,3分以内)をご希望の方は,「参加申込書」に必要事項を記入して提出してください.なお,時間の都合で発言できない場合もあります.

◇参加申し込み

  「参加申込書」に必要事項を記入して,下記の申込み先まで送付してください.当日の参加も受付けます.
  当日資料代千円を予定しています.集会は募金でまかなわれますので,1口2千円以上でのご協力をお願いします.

◇募金・参加申込・問合せ先(注)

  原水爆禁止2015年世界大会・科学者集会実行委員会
  〒113-0034 東京都文京区湯島1-9-15 茶州ビル9階 日本科学者会議 気付

◇2ndサーキュラーは6月末までに発行を予定しています.その後の最新情報は次のウェブをご覧ください. 

 

◇その他

  ・会場案内はhttp://www.y-caliente.jp/を参照してください.
  ・7月28日〜8月8日には第23回世界スカウトジャンボリーが山口市内で開催され,混雑が予想されるので,宿舎等は各自で早めの予約手配をおすすめします.

以上,1stサーキュラーより
 注:山口支部内の参加申し込み・募金等は、支部事務局で受け付けます


途上国でのささやかなボランティア活動

下関/濱田盛承

 私は2006年3月,34年間勤務した(独)水産大学校を退職した。退職後をどのように過ごすかは人それぞれだが,私には一つの望みがあったので,それを何としても実現させかった。「望み」のきっかけとは在職中に北アフリカのモロッコで経験したJICAのプロジェクト(1994-2001年)である。プロジェクトの目的はモロッコにおける水産専門学校を大学に昇格させるということであった。私は水産加工の分野からのアドバイスや何度かの短期出張で実技指導(化学分析,微生物実験)を行った。私のささやかな技術がこんなにも待ち望まれているのかと思ったとき,退職後は海外でボランティア活動も魅力的だと思うようになった。
 JICAの海外ボランティアの活動は対象国が途上国であり,現地の人々と直接触れ合う仕事となる。自分のこれまでの知識や経験,あるいは自分の性格はそのような活動に向いているのだろうか,派遣中には日本における様々なつながりが遮断されるがそこまで踏み切れるだろうか,健康面は大丈夫か,・・・など様々な思いが脳裏をよぎったが,「ままよ!」とばかりにシニアボランティアの道に進んだ。どの国にどのような職種があるかはJICAのHPで調べればすぐわかるので,当初はFijiを選んだ。派遣先はUSP(南太平洋大学)でその中の水産学科に配属された。教室で学生に教える授業も打診されたが,私はFijiの魚を使って加工する実技指導(練り製品,ミートボール)にこだわった。しばらくするうちに学内で開かれるミニ学会のパーティ料理作りやUSPの学長(当時はキリバスの大統領)の視察があるので何か魚料理を展示してほしいなどの要請も来るようになった。種々の日本風魚料理は大学関係者や外部の方も気に入ってくれたようで,それらの様子を見てボランティア活動の喜びを知った。2年間の活動の後,USPにおける成果をパンフレットにまとめ,学生や住民の参考資料として残した。
 帰国後「何か物足りないな」と思ったが,それはFijiでは学外の住民とのつながりがほとんどなかったことである。そこで1年も経たないうちに次の国(ミクロネシア国,FSM)に再チャレンジした。派遣先はミクロネシア短期大学(COM)の中の技術普及機関である。この機関はわかりやすく言えば日本の農業(水産)改良普及所といったところだろうか。ここで栄養改善を担当していた女性と島内各地の小さな村落を回り,私は主に練り製品の作り方を,彼女は農産物の調理を住民に教えた。FSMでは2年半滞在し,その間スタッフのようにして働いた。幸い所属機関や住民の方も私の活動を喜んでくれたものと思う。
 併せて4年半にわたる海外ボランティア活動であったが,私の所期の目的は十分達せられたし,途上国での生活も楽しんだ。ただし泥棒には何度も入られ,嫌な思いもした。しかし総じていえばボランティア活動の素晴らしさを実感した。どこの国の人でも信頼し合えば結びつきがつよくなり,日々の生活を楽しむことができることを実感した。
 最後に思い切って海外に飛び出すのも人生を楽しむ一つの選択肢ではなかろうかと申し述べて拙文を締めくくります。
(2015年4月受理)


科学のつどいの報告

第8回 1月16日「音楽をよむ〜音楽におけるテキスト読解〜」

 講師は山口大学教育学部の池上敏教授(非会員)で作曲が専門。楽曲をアナリーゼ(分析する)ことと作品に内在するメッセージを如何に読み取るかという二つの面を、ピアノを引き語りながら講演された。俗に「運命」と呼ばれている、ベートーヴェン作曲:交響曲第5番ハ短調作品67を題材とするお話は、聞き手を音律のマジックに引き込むものであった。参加者は15名ほどで非会員が大半であった。

第9回 5月21日「大規模野菜農業の光と影 ー アブラナ科野菜根こぶ病を例に」

 講師の田中秀平さんは3月、山口大学農学部で定年を迎えるまで、野菜の病理に関する研究を続けてこられたが、代表的なテーマであるアブラナ科野菜(蕪、白菜、小松菜など)を連作したときに発生する「根こぶ病」について、総合的かつ学術的な話を素人にも分かりやすくされた。そして、こうした「土壌伝染性病害」は世界中至る所で発生しており、大規模野菜農業につきものである。生産コスト削減や価格の安定化を目的とした大規模産地化の政策に起因する点で、大いに警鐘をならされた。参加者は15名。

その他の支部活動

 2015年2月以降の支部および支部会員が関わった活動は次の通りです。
・原水禁世界大会科学者集会実行委員会 3.21, 5.9
同上事務局会議 5.15, 5.22 (実行委員会は支部会員18人ほかで構成)
・3.21上関原発をつくらせない県民大集会
・5.3 憲法集会:実行委員に松原会員が参画、増山会員が原水禁科学者集会の案内を報告
・5.30 原発をつくらせない会第19回総会の学習会:増山会員が「上関原発の現段階と諸問題」を講演
・5.30-31 JSA全国大会:山口支部からは吉村さんが参加

会員の異動

 4月から山口大学人文学部の教員1名が新規加入。5.31現在の山口支部会員数は52名(3月末で退会1名(山口大学医学部)、他の定年者4名は引き続き会員)

編集後記

 戦後70年という節目の年を狙ってか、戦前・戦中の辛苦を知らない政治家らが、矢継ぎ早に平和と民主主義への攻撃を仕掛けている。国会議員の多数を背景に「安保法案」の成立をはかっている国会で、参考人の憲法学者三名全員が「憲法違反」の陳述をした重みは大きい。山口でも会員有志による護憲運動が提起されているが、情勢は緊迫しており、運動の急速な展開が望まれる。

JSA山口支部事務局
   〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
  Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union@ma4.seikyou.ne.jp

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