日本科学者会議山口支部ニュース 第175号(通算)(2015年10月11日)
つ う し ん
WEB版 2015-10-11

 

安保法制反対運動が山口で盛り上がる

 山口大学では科学者会議会員有志が中心となった12名の呼びかけ人により、6月23日、「安倍内閣は『平和安全法制』の諸法案を撤回すべきである」という、「平和安全法制」に関する山口大学関係者の意見表明がなされました。呼びかけ人グループは直ちに「意見表明」に対する賛同署名を集め始め、7月15日には210余名の賛同署名が集まっていることを記者会見で発表するとともに、政府・国会・政党にFaxで意見表明を送付しました。
 その後、山口大学経済学部の会員が中心となり、7月に3回の討論学習会を学生・市民参加で実施しました。8月23日には経済学部で市民を含め80余名の討論集会「安保法制の問題点と私たち」を行い、炎天下に大学正門からふしの川まで40数名のデモを敢行しました。
 「意見表明」の呼びかけ人はその後20名に増え、署名は395筆となり、9月15日、緊急学内集会「安保法制は廃案しかない!」が約40名の参加で開催され、集会声明を決議し、政府・国会・政党に送付しました。国民の過半数が安保法制に反対の意向であることが世論調査でも明らかな中、政府与党は9月19日未明に国会で可決されたとしていますが、立憲主義を踏みにじって憲法九条をないがしろにする安保法制は決して容認できるものではなく、「議決」は終わりではなく、来年夏の国政選挙での国民の審判にむけ、新たな安保闘争の始まりとも言うべきものでしょう。 「意見表明」全文と呼びかけ人名は8頁に資料として掲載しています。

「安保法制法案」をただちに廃案とすることを求める

 昨年7月1日、安倍内閣は、戦後70年近くの間日本国がとってきた平和・防衛方針を転換し、「新三要件」に合致する場合に集団的自衛権の行使を可能とするとの閣議決定を行った。このような変更は憲法に違反するとの抗議の声がただちに上がったが、自公与党と安倍内閣は本年5月14日にこれを具体化する「平和安全法制法案」を閣議決定し、翌5月15日、これを国会に上程した。
 以後、衆議院では7月15日の特別委員会での強行採決、翌16日の本会議での採決強行を経て、現在、参議院の特別委員会で審議されている。これまでの衆参の審議の中で、同法案の違憲性と危険性が明らかとなり、国民も大多数がこれに反対しているにもかかわらず、安倍内閣は同法案を今週中にも強行採決しようとしている。
 同法案は安倍内閣の主張とは逆に日本国民と自衛隊員の命を危険に追いやるものであり、私たちは断じてこのような暴挙を認めることはできない。
 私たちは、同法案の採決を強行することに断固反対するものであり、安部内閣が同法案の成立を断念し、国会が同法案を廃案とすることを求めるものである。
2015年9月15日   山口大学関係者「安保法制問題」緊急集会参加者一同

原水爆禁止2015年世界大会科学者集会in山口、成功裏に閉幕

 ― ヒバクの実相,ヒバクシャ支援と核兵器廃絶 ―」をメインテーマに,去る8月1日に山口市湯田温泉のカリエンテ山口において開催され,実行委員20名を含めて101名が参加しました.
 今年は,広島・長崎の被爆から70年という節目の年.核抑止論に基づいた平和主義の根本的な危険性が増大している現状を踏まえ,核兵器は科学者が生み出したものであり,それを解体・廃絶するということは科学者の社会的責任を考える原点だと言えます.戦争に加担する研究には協力しないという姿勢を貫くことが私達には肝要です.このことは戦後の日本における科学者・技術者が決断した良識であり,この良識と日本国憲法の精神を改めて深く確認することを本集会における大きな目的の一つでした.
 本科学者集会では,被爆と被曝をめぐる科学的な話題,山口県における被爆者支援,福島県における原発事故と課題,核兵器廃絶に係る国際的な活動報告,日米軍事同盟と安倍政権の本質,民間人の戦争被害と日本政府の歴史,山口県の岩国基地と日米軍事同盟,に関する7本の講演と総合討論が行われました.
この科学者集会の最後に11月に長崎で開催予定の第61回パグウォッシュ会議世界大会へのアピール「核兵器廃絶の実現と日本国憲法擁護への支持を訴える」を採択しました.集会の報告は日本の科学者10月号と12月号に掲載されます.

核兵器廃絶の実現と日本国憲法擁護への支持を訴える

 先のNPT再検討会議では最終文書は採択することができないまま閉会になったことは大変残念でした。とりわけ107カ国が賛同提案した「人道の誓約」に対して、唯一の被爆国として、核兵器廃絶の先頭に立つべき日本政府が、これに賛同しなかったことは、平和を願う多くの国民の願いに背くことでした。私たちはこのことについて日本政府に抗議するものです。
 ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士は、1955年、戦争の廃絶を呼びかけた「ラッセル―アインシュタイン宣言」に署名し、核兵器は人類の存続をおびやかしている事実から、その第一歩として核兵器の廃絶を強く訴えました。1975年、湯川・朝永宣言「核抑止を超えて」を発表し、核抑止論を批判、核兵器の廃絶にとどまらず、その先に全面完全軍縮と戦争のない世界のビジョンを提示しました。
 湯川は日本国憲法が、まさにその理想を具体的に示した世界に誇る憲法だと高く評価していました。私たちもこのことを確信しています。
 私たちは、かつて日本が東アジアの諸国を侵略し、多くの人々を殺戮し、苦難を与えたことを深く反省し、また原爆の惨禍を経験した唯一の国民として、二度と戦争をしないことを決意し、そのことを国内外に誓約する日本国憲法を制定しました。アジア・太平洋戦争終結から70年、日本は戦争をしない国として世界の多くの国から信頼されてきました。
 今国会で審議中の「安保法案」は、この輝かしい日本国憲法を踏みにじる悪法であり、核のない世界、戦争のない世界、平和で公正な世界を希求する世界の多くの人々の願いに背き、東アジアの緊張を高めるものであり、断じて認めることはできません。
 私たちは、日本国憲法を固く守ることを決意し、第61回パグウォッシュ会議世界大会の成功を祈りつつ、核兵器廃絶の実現に向けて粘り強く闘っていくことをここに表明します。
2015年8月1日  原水爆禁止2015年世界大会・科学者集会in山口 参加者一同

日本科学者会議第46回定期大会の概要報告

吉村高男(JSA山口支部 全国幹事)
 創立50周年を迎えた、日本科学者会議(JSA)第46回定期大会が5月30日(土)・31日(日)に、中央大学理工学部を会場にして開催された。
 50周年を迎え、JSAの最大の課題は健全な財政改革である。1977年に1万人を超えていた会員数は、現在その半分以下になっており、健全な財政運営の維持のためには、少なくとも5000人を超える会員の確保が必要である。そのため、支出項目ごとの削減目標等を示した「中期的な展望に基づく財政改革案」が示された。JSAは、様々な専門分野を有する人々が結集している、我が国唯一の民主的な科学者集団で構成された組織である。そのような中で、ITを積極的に活用して会員相互の連携を深め、支部・地区・全国を繋ぐ、効果的・効率的な組織運営を目指すことや、総合的な学術雑誌として評価の高い月刊誌「日本の科学者」をJSAの顔と位置づけ、会員拡大のためにそれを積極的に活用することなどが強調された。
 ところで、昨年から国際政治は不安定化の度を増している。ロシアによる突然のウクライナのクリミア併合をはじめ、ウクライナ東部での親ロシア勢力と政府軍との軍事衝突や、シリアでの内戦状態がまず挙げられる。リビア、イラク、アフガニスタン等ではイスラム過激派の力が増大している。日中間では政治的・軍事的緊張感が高まっている。国際経済面では、中国の成長率は低下しているが、依然東南アジアは高い経済成長を持続させており、先進各国のグローバル企業が投資を集中している。EU経済は依然困難な状況にある。米国経済は復活の兆しを見せつつあるが、中間層の衰退と貧困層の拡大が増大している。日本では、企業のグローバル展開の本格化と「世界で最も企業が活動しやすい国づくり」を目指すアベノミクスとの結合により、グローバル企業の利益と国民の経済的利益との格差・対立が深刻化している。
 そのような中で、(1)人類の生存と平和的繁栄のために研究を行い社会に働きかける、(2)高等教育と科学・技術の真の発展のために発言し行動する、(3)本会の全力を注いで組織を強化・活性化し科学者運動を発展させる、(4)「日本の科学者」を充実・普及する、という観点から各支部等で実践した活動報告と今後の活動方針について議論が行われた。
 (1)については、現政権による軍事力強化政策に代表されるように、国民生活に不安と混乱をもたらしている。JSA本来の民主的な科学者集団としての潜在力を活かし、国民世論を先導する研究活動を展開していく必要がある。東日本大震災からの復旧・復興、総合学術集会の充実、国民のニーズに応える研究活動の促進等が急務である。特に、原水禁科学者集会が8月1日に山口市で開催されるが、この集会が新たな平和運動への起爆剤になればと願っている。
 (2)については、大学問題と若手研究者問題を重視する中で、学術研究と教育の危機打開に向けた取り組みが急務であることが確認された。深刻化する大学問題、危機に瀕する基礎研究、私立大学の経営・教学問題、ポスドク・非常勤講師問題など社会にアピールし、具体的な打開策を持ち、民主的な諸団体と連携して、実践活動を行っていく必要がある。
 (3)については、冒頭でも述べたように、健全な財政を確保するためにJSAの総力を注いだ組織力の強化・活性化を促進し、会員拡大に努めなければならないことが確認された。Twitter機能を活用したネットワークづくり等も具体的に提案された。
 (4)については、「日本の科学者」の総合学術誌としての性格付けをしっかりしていくことの重要性が強調された。一般市民にも親しまれる雑誌に心がける必要がある。JSAの顔として、広く普及できる内容の充実に努めることが肝要である。
 これらの討論を踏まえ、「日本の高等教育に思想信条、学問・研究の自由と自治権を保障するとともに、教育の機会均等を実現せよ」、「研究不正を誘導する学術研究体制の改善を求める決議」等の5つの大会決議文と、第46回定期大会アピール文が採択された。その後、新役員や幹事等を選出し大会は閉幕した。  (2015年6月受理)

山口支部大会の開催

 10月31日に下記のとおり山口支部大会を開催しますので、出席願います。別紙の議決連絡票にて出欠・委任・文書議決の手続きをお願いします。従前の規約では代議員による大会となっていますが、実態に即さないので、改正規約案に従って開催します。なお、議決連絡票は10月30日正午までに、事務局宛郵便・FAXあるいは事務局長宛E-Mail にて回答してください。
    日時 2015年10月31日 14:00〜16:00
    会場 山口勤労者総合福祉センター サンフレッシュ山口 スタジオ2
    〒753-0056 山口県山口市湯田温泉5丁目5番22号
10月3日 幹事会

議案1 2014年度支部一般会計会計決算
     2014年度特別会計(上関埋立住民訴訟関係)

議案2 2015年度一般会計予算案

議案3 山口支部規約改正案

議案4 活動方針案

議案5 役員の改選

議案6 全国大会代議員候補の選出

議案7 2016年度以降の年会費の改定


支部活動日誌

 2015年6月以降の支部および支部会員が関わった活動は次の通りです。
・原水禁世界大会科学者集会実行委員会 6.13, 7.11
    同上事務局会議 6.5, 6/19 ,6/26,7/2, 7月中下旬は随時
・7月15日 平和安全法制に対する記者会見(県庁記者クラブ)
・7月18日 JSA中国地区会議(岡山) 吉村、増山が参加
・8月1日 原水爆禁止2015世界大会科学者集会in山口を開催
・8月4-6日 原水爆禁止2015年世界大会(広島) 吉村が4日に科学者集会開催を報告
・8月23日 討論集会「安保法制の問題点と私たち」
・9月15日 緊急学内集会「安保法制は廃案しかない!」
・10月3日 山口支部幹事会

新入会員の紹介

 山口大学人文学部Hさんの8月1日付での入会が幹事会で承認されました。
     所属学会:日本語教育学会  専門分野:日本語教育   研究テーマ:構成的グループエンカウンター
9.30現在の山口支部会員数は53名
  内訳 山口大学 21名、その他大学 4名、法律家 5名、医師 5名、 試験研究機関 1名
     自宅 17名(大学退職者16名、試験研究機関退職者1名)

【資料】「平和安全法制」に関する山口大学関係者の意見表明

安倍内閣は「平和安全法制」の諸法案を撤回すべきである

 昨年の7月1日の閣議決定とそれに基づくとして今国会に付議した平和安全法制によって、安倍内閣は日本が集団的自衛権の行使ができるようにすることを提案している。しかしこれは、戦後長きにわたって私たちが日本国憲法のもとで自らに課してきた平和・防衛方針、他国を攻撃せず、自国が攻撃されたときにのみ自衛のために武力を行使できるという考えを大きく変えることを求めるものである。したがってこのような根本的な国家の方針の変更は国民全体による最大限の熟考・熟慮を経た上で慎重の上にも慎重に行われるべきものである。すでに国会の参考人陳述において憲法学者や元法制局長官等から憲法に反するという強い懸念が出ていることもこのことを示していると言えよう。
 日本国民が敗戦の痛切な反省に基づいて、1946年の憲法公布以降、一貫してその憲法が定めた内容であると信じてきた基本方針をもし変えようとするならば、憲法そのものの改正が必要である。そしてそのためには、憲政と議会制民主主義の王道として、安倍首相はまず国政選挙でこの方針を最重要な争点として国民に訴えて国民の賛否を問い、その上で国会に提案し、十分に議論した上で、最後に国民投票によって国民の判断を仰ぐという三つの手順を踏むべきであった。
 しかし安倍氏と自民党が直近の国政選挙で争点として訴えたのは「消費税の引き上げを延期すること」であったことは記憶に新しい。こうした別争点によって得た多数をもって、今国会において「安全法制」の議論を進め、会期の延長と採決を図ろうとすることは、とうてい議会制民主主義の正しい姿と言えるものではない。このことは本法制それ自体への賛否にかかわらず、国民大多数の感じるところであろう。
このように、現在行われている国会での議論は、そもそも、上の手続きの最初の重要段階、つまり国政選挙で国民に争点を訴えるという段階を回避して始まったものである。まずこの点から安倍内閣はやりなおすべきである。したがって安倍内閣はまず現法案を撤回すること、そして次の国政選挙においてそれを訴え、その後の国会で十分な議論を行い、そして最後に国民投票によって国民の判断を仰ぐという、議会政治の正しい手順に戻るべきである。
 こうした正面からの憲法改正議論の中においてはじめて、国会で現在すでに論戦が行われている同法案の是非、またその核心としての「情勢の変化」の内容、評価と、またそれに対応するために集団的自衛権の行使がはたして真に必要なのか、それが是なのかの問題が、正しい議会制民主主義の手続きにのっとったものとしてあらためて議論されうるであろう。
 こうした憲政国家の正道に立ち帰ることなく、現行の「多数議席」に頼って同法案を強行しようとするならば、それは安倍政権と与党に対する国民の深刻な失望を生む以外のなにものをももたらさないであろう。

2015年6月23日   呼びかけ人(8月20日現在20名)

編集後記

 12年ぶりに一堂に会しての支部大会が幹事会より提起されております。今期、科学者集会の開催を機に2名の新入会員を迎えました。来年12月、支部結成50周年を迎えます。活動の継承発展には若い力が発揮されることを期待しましょう。

JSA山口支部事務局
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