日本科学者会議山口支部ニュース 第176号(通算)(2016年3月1日) |
つ う し ん |
WEB版 2016-3-4 |
新聞テレビ雑誌を通じて「マイナンバー」に対する疑問が投げかけられている.しかし,そもそも「マイナンバー法」とはどんな法律なのか,こんな一番聞きたい疑問に答えて,憲法と情報法が専門の立山紘毅さん(山口大学経済学部)が面倒な条文をひもとき,法体系の中でどんな位置づけを持つのかを解説した.法律的にはマイナンバー法で整備されても,国税庁の通達が10月初めに変更になったことに端的に表れているように,行政側もまだ混乱した状態である中で,1月から実施に移されるということに最大の問題がある.そして,個人情報の保護の問題や,民間を含めた円滑な利活用に資することが出来るかどうかの心配が述べられた.
マイナンバーを拒否あるいは破棄するとどうなるかという質問には,「どうにもなりません.復元が出来ない方法で住民基本台帳の個人番号から生成された番号なので,基本台帳が存在する以上,拒否も破棄も無意味です」との回答.「マイナンバーは通常は不要なので,大事に仕舞いこんで置くのが一番賢明.個人番号カードを持つことは全くお奨めできない」ということであった.
山口支部ではしばらく企画された活動がなかったが,2011年の原発事故を契機に数度,放射能汚染などの講演会が行われた.そのような経験を元に,「科学のつどい」は2013年4月から山口大学吉田キャンパスにおいて教職員組合との共催で,会員だけでなく一般の教職員さらに市民との交流の場として開催されてきている.10回のうち,8回は非会員の研究者に話題を提供してもらい,うち,3名を会員に迎え入れている.これまでのところ世話人から話題提供を依頼しているのがほとんどであるが,ちょうど科学者が学会に参加するように,会員の方から講演を申し出るようになれば,一つの活動スタイルとして定着するだろう.(つどい世話人 増山博行;日本の科学者2016年3月号、科学者つうしん欄に寄稿)
山口大学理学部で新沼会員が講演しましたが、残念なことに吉田キャンパスの複数学部の会議と重なり、参加者は一ケタでした。宇宙にたくさん存在する活動銀河の中心部にはブラックホールがあると考えられています。ブラックホール自身は見えないが、そこへ落ち込む物質が出すガスが電波で観測されるという興味深い話題でした。また、電子レンジから漏れ出る電波や、自動操縦の車から発せられる電波で、電波天文学の観測が妨げられたり、あるいは珍奇な「新発見」の騒ぎとなるという、苦労話もありました。
東日本大震災が発生してから5年の歳月が経つ。大津波に襲われた東北沿岸部では道路・鉄道、その他インフラの再建が進み、失われた命は戻らないものの、新たに高台に造成された街で人々が生活を取り戻しつつある。他方、福島第一原発事故により放射線量が年50mSvを超える帰還困難区域は7市町村、2万4千人にのぼり、これ以外にも事故の影響で故郷を離れた人々をあわせると、今なお10万人を上回る人々が故郷を離れている。
広島・長崎の原爆投下と比べて、原発事故の影響が長期に及ぶのは原爆とは桁違いの放射性物質を原発が抱え込んでおり、数十年という半減期でβ線・γ線を出す物質が多いためである。それでも、福島第一原発の事故は日本の東半分の喪失という最悪の事態を偶然にも回避できたと言われている。原発の苛酷事故がどれ程のものなのかを、多くの国民も当時の政府も実感し、原発は運転停止となった。その結果、電力不足などにならなかったことは原発による電力が不可欠のものではなかったことを実証している。現在に至るまで福島第一原発では放射能汚染水は溜まる一方で事態が収拾しているとはいえず、さらに原子炉を廃炉にし、放射性廃棄物を処理する工程は数十年以上と言われている。
昨年8月末に国際原子力機関(IAEA)が福島第一原発事故を検証した最終報告書を公表した。報告書はわが国では原発は安全だという電力会社の思いこみがあったこと、かつ原子力安全保安院と国も電力会社に追随して安全神話を信じていたため、苛酷事故への備えが不十分だったと指摘している。
しかしながら政権が代わると「原子力村」の圧力の下で原発再稼働が準備され、昨年8月には九州電力川内原発が再稼働されるに至った。電力会社は対策が施され、原子力規制委員会の新審査基準審査にパスして安全だと言い、総理も世界一の安全基準だと言う。他方、肝心の規制委員会は審査に合格することと事故が起こらない、あるいは起こっても安全だということにならないと言明する始末である。電力会社は本当に安全神話を克服しているのであろうか?
昨年末の報道によると、東京電力が規制委員会に提出した書類に反して、柏崎刈羽原発の安全設備関連のケーブルはその他のケーブルと分離されていなかった。同様なケーブルの不分離は他の原発でも露見したため、規制委員会は1月になって電力会社に点検報告を求めることになった。また、九州電力は川内原発の再稼働に際して規制委員会に約束した免震重要棟の建設をやめると公言している。たとえ原発建屋が地震等で損傷を受けても機能すべき重要棟であるのは論を待たないが、求められている耐震基準が厳しすぎることを理由に挙げているのはどういう見識であろうか。
ひるがえって中国電力はどうであろうか。1990年代以降に点検記録の虚偽や機器点検・交換漏れが多発している。埋立を継続して申請している上関原発の立地には多くの問題点が指摘されている(「原発を阻止した地域の闘い(第1集)」本の泉社)。公共性を自認する安全優先の事業者であるならば、IAEAの福島第一原発の最終報告書を真摯に受け止め、上関の計画はいったん白紙撤回してゼロベースで考え直すことこそが社会的責任の取り方ではないか。(広島保険医新聞(第480号)「原発よりも命の海を(69)」2016年2月10日掲載)
10月31日に日本科学者会議山口支部の第50期支部大会が開催され、出席9名、議決票提出3名、議長委任21名の合計33名の参加で、会員53名の過半数27名を越えて大会は成立し、提案の議題を全て可決し、大会アピールを採択しました。
日時 2015年10月31日 14:00〜15:35 会場 山口勤労者総合福祉センター サンフレッシュ山口 スタジオ2 議長 S 出席 8名(議長以外) 議決票提出 3名 議長委任 大学教員15名(うち山口大学13名)、退職教員6名
支部大会は2004年7月に大会途中で中断されて以来の11年ぶりとなりました。従前の支部規約では代議員による大会となっていましたが、代議員選出母体の班が山口大学平川分会にしか残存しないという事態の中で、改正規約案に従って、全会員の過半数で成立するという要件で開催されました。なお、昨年と一昨年は臨時の措置として、全会員の過半数のメール投票で成立するという臨時措置で役員、方針、予算等を決定して来ましたが、今回以降は新しい支部規約の下での大会と支部運営へと正常化されることになりました。
なお、提案議題はつうしん175号に記載されていますが、予算案の支出の内訳が
事業費 145,000 → 155,000
予備費 897,178 → 887,178
のように、事業費を1万円増額した修正提案が可決されています。
また、選出された新役員は
であり、吉村氏は全国大会において、全国幹事として選出されています。さらに、全国大会の代議員候補は
と決定されました。
私たちは「科学研究に携わる科学者がその社会的責任を自覚し、科学の各分野を総合的に発展させ、その成果を平和的に利用するよう社会に働きかける」という日本科学者会議の理念から目下の政治的・社会的情勢を見据えて次のアピールを行う。
T.「平和安全保障関連法」の廃止を求める
安倍内閣は国会での多数与党の力を背景に、百日近い会期延長、かたどおりの審議、さらに野党の一部も取り込んで会期末に安保法制を成立させたと称している。しかし、国会審議を重ねるごとに法制の矛盾は露呈し、憲法違反の法案と立憲主義をないがしろにしたやり方に国民の批判は高まり、内閣支持率は低下を続けた。国会周辺及び各地での抗議集会・デモはかってないほどの高揚を見せ、これまで政治に無関心と思われた若者がNo!の声をあげ始めている。
国会で成立した法律は「悪法と言えども法なり」と言うところだけで立憲主義をかすめ取っているが、憲法第53条の規定を無視して、TPP問題での臨時国会開催要求を無視するという新たな憲法違反の姿勢を示している。昨年の憲法9条の「解釈改憲」に始まる一連の憲法無視の政治は直ちにやめさせなければならない。民主主義の根幹である立憲主義を回復し、戦争法である「平和安全保障関連法」は廃止されなければならない。
U.大学や公的研究機関での軍事研究に反対する
政治の軍国化とならんで、科学技術を戦争に動員する企みが進行している。平成27年度より防衛省は「安全保障技術研究推進制度」と言う競争的研究資金配分制度を創設し、33の研究テーマを募集した。これには、山口大学を始め大学等から58件、公的研究機関から22件、企業等から29件の応募があり、うち、9件(1件あたり3千万円)が採択された。研究成果の公表や民生分野での技術の活用も許されると言うが、設定されたテーマはまさに防衛省が必要とする軍事に活用できる研究テーマであることは明らかである。
先の世界大戦に大学人が研究面でも動員され、学生は学徒出陣をさせられたことを再び繰り返さないという決意で戦後の新制大学はスタートした。この建学の精神は名古屋大学の平和憲章に明文化されている。いまここに戦争法の制定を背景に再び科学技術を動員する動きが顕在化していることに私たちは警鐘を鳴らさざるを得ない。軍事研究に手を染めることは非人道的兵器への批判力をそぐだけでなく、自由な学問研究の発展を阻害することになる。科学技術は人類全体の平和と幸福のために活用されるべきであり、大学や公的研究機関での軍事研究には断固反対するものである。
2015年10月以降の支部および支部会員が関わった活動は次の通りです。 ・10月31日 支部大会が開催され、提案議題をすべて可決し、「大会アピール」を採択した。 ・11月19日 「原発を阻止した地域の闘い(第一集)」本の泉社発刊の第5報告に上関原発についてが掲載 ・12月10日 キャンパス科学の集い(10)「マイナンバーを『正しく』心配する」 ・12月13日 JSA中国地区会議(岡山) 田中、増山が参加 ・12月17日 小林節講演会実行委員会(1) ・1月 7日 小林節講演会実行委員会(2) ・1月20日 キャンパス科学の集い(11)「観測天文学が解き明かす宇宙−電波天文学の現在と未来」 ・1月20日 小林節講演会実行委員会(3) ・1月24日 小出裕章さん講演会「子どもたちの未来のために小出さんと考えよう! 福島の、わたしたちの、いまとこれから」(JSA山口支部は賛同団体) ・2月11日 建国記念の日集会 ・2月13日 JSA中国・四国地区合同会議(岡山) 吉村が参加 ・2月16日 小林節講演会実行委員会(4) ・2月27日 小林節さん講演会「憲法を取り戻す」(JSA山口支部は賛同団体)
編集後記
JSA山口支部事務局 〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付 Tel 083-933-5034 Fax 083-921-0287 e-mail fuy-union@ma4.seikyou.ne.jp |