2017年度(52期) JSA山口支部大会の報告
大和田正明(JSA山口支部 事務局長)
山口支部大会は10月1日(日)、14:00〜15:45、山口大学理学部を会場に開催されました。出席8名、議長委任17名、書面による議決参加3名の合計28名が参加し、過半数26名を越えて、大会は成立しました。
大会は事務局長の開会の挨拶に続き、村上会員を議長に選出、代表幹事による活動報告の後、あらかじめ配付の議事案に沿って、会計幹事による決算報告、会計監査の報告、予算案、活動方針案が順次説明されそれぞれ挙手により全会一致で差一決されました。また役員も選出(全員留任)されました。全国大会の代議員候補については、順位1位の候補は全員一致、順位2位以下は書面による意見表明で2名が可とせず、残り26名の可で承認されました。
第6号議案「会費未納者に関する申し合わせ」は、書面による議決参加1名から否の意見が表明されていること、会議参加者からも、2年という未納期間で機械的に切るのは拙速ではないかという意見が出され後に示すように修正され、会議参加者と委任を受けた議長の賛成で承認されました。
大会を終えるにあたり、来年度に山口で開催予定の「中国地区シンポジウム」について補足の説明と協力依頼が全国幹事および代表幹事から述べられ、事務局長の閉会挨拶で大会は閉じられました。(10月2日)
採択された山口支部大会の議案書
はじめに
安倍内閣による解釈改憲に基づいて行われた一昨年9月の安保法制以降、これに抗して「立憲民主主義」の回復を求める動きは高まり、山口では昨年2月に小林節講演会を成功させ、7月の参議院選挙では纐纈厚元会員が市民連合・野党統一候補として善戦した。しかし参議院選挙での勝利を背景に安倍内閣は今年6月には共謀罪法案の成立を強行し、さらには反対の多い「残業代ゼロ法案」を通そうとしている。また、安倍総理は憲法9条に自衛隊を明記する第3項に加えるという姑息な方針を5月に打ち出した。反面、森友・加計問題、陸自の日報問題等で、国民目線から乖離した安倍政権の暗部がさらされ、安部暴走に対する批判が高まっている。
国際的には米国でトランプ政権が誕生する中、北朝鮮の核・ICBM開発に伴い、緊張が高まっている。沖縄では辺野古基地建設にともなう海面埋立が県の反対を押し切って始まり、山口では岩国基地にオスプレイが配備されたのに続き、厚木基地から空母艦載機部隊の移駐が始まり、極東最大の米軍基地になろうとしている。
2011年のフクシマ原発事故の反省もつかの間、昨年度は原発再稼働を容認する判決が出され、川内、高浜、伊方原発が再稼働され、今後も玄海などの再稼働が予定されている。山口県知事は昨年8月、中国電力の上関原発にかかる海面埋立免許の延長を許可し、再び着工の準備が始まっている。国は原発を重要なベース電源とする立場を変えておらず、本年7月には高レベル放射性廃棄物の地下埋設処分の「適地」マップを公表し、地層処分を押し進めようとしている。JSA山口支部は2月に安斎育郎講演会「福島のいま」の共催団体として、これを成功させた。
国内では安部1強体制への批判が強まり、東京都議会選挙で自民党が歴史的大敗を期すなどの変化が現れ始めている。核大国とその同盟国は核抑止力にとらわれ、これに対抗して核実験とミサイル開発を強行している国がある一方で、今年7月に「核兵器禁止条約」が国連会議で採択された意義は大きい。核廃絶に背を向ける国々を孤立させることは地球の破滅を避けるために不可欠であろう。
1昨年創設された防衛省の「安全保障技術研究費」は今年度、百億円余に増額された。日本学術会議はこの3月に批判的立場からの声明を発し、JSA山口支部も昨年10月の大会に続いて、5月に軍事研究に反対する声明を出した。また、2月には全国の運動に呼応して署名運動を行った。
JSA山口支部は微力ではあるが、「キャンパス科学のつどい」を引き継ぐ形で開かれているミニ講座「YU学び舎」の協賛団体として、社会の諸問題について市民、学生とともに学び、理解を深める運動に貢献を続けている。
2018年秋にはJSA中国地区シンポジウムを山口で開催することになっている。この成功のためにも、2017年度は科学者運動の一層の前進を図ることが期待されている。
報告 1年間の歩み (一部割愛)
・10月8日 第29回中国地区シンポジウム(広島) 山口から非会員3名を含め6名参加
テーマ 危機に立つ大学と改革の展望 ? これ以上大学を国民から切り離していいのか?
・10月29日 支部定期大会 議案は提案通り採択、「軍事研究費ではなく経常的教育研究費で大学の活性化を」とする決議も採択
・11月16日 ミニ講座「YU学び舎」第1講、崎田元会員が「上関原発計画をめぐる山口県の対応昨今」の話題提供。市民をはじめ23名参加。支部会員は数名
・12月16日 「つうしん」第178号発行
・12月21日 ミニ講座「YU学び舎」第2講、溝田会員が「最近の世の中で進行していること 〜非営利株式会社 市民共同発電うべの設立をめぐって〜」を話題提供。市民を含め23名参加
・1月18日 ミニ講座「YU学び舎」第3講、内山会員が「安保法制違憲訴訟の意義」を話題提供。参加者22名
・2月下旬 軍学共同反対連絡会の「防衛装備庁に「安全保障技術研究推進制度」の廃止を要請し、 各大学・研究機関に応募しないよう求める緊急署名」を支部としても取り組み、市民を含め200名の署名を集める
・3月18日 安斎講演会「福島のいま」を共催し、カリエンテ山口に230名の参加者
・3月25日 上関原発を建てさせない山口県民大集会、 山口市維新百年記念公園にて
・3〜4月 会員の異動と会費徴収作業
・4月26日 ミニ講座「YU学び舎」第4講、君波元会員が「原発に関わる3つの話題」を話題提供。参加16名
・5月13日 支部幹事会の声明「山口大学は「安全保障技術研究」を推進する立場なのか」を発表
・5月27, 28日 全国大会に吉村会員が代議員として参加
・5月31日 ミニ講座「YU学び舎」第5講、松原会員が「「共謀罪」と「テロ等準備罪」について考える」を話題提供、24名参加
・6月1日 「つうしん」第179号発行
・6月3日 第21回原発をつくらせない山口県民の会総会および学習会(増山会員参加)
・6月7日 「市民の自由な行動を阻害する「共謀罪」の創設は絶対に許さない」との声明を公表。支部は声明に賛同する団体に連なる
・7月上旬 日本の科学者編集委員会に森下会員が出席
・7月15日 JSA第53期第1回中国地区会議(岡山にて、吉村会員参加)
・7月26日 ミニ講座「YU学び舎」第6講、纐纈元会員が「安倍改憲構想の意図するもの:安保県連法制と自衛隊の動きに絡めて」を話題提供、市民を中心に25名の参加
・8月1日 「つうしん」第180号発行
・8月27日 支部幹事会(6名出席)
・9月28日 ミニ講座「YU学び舎」第7講、「加計学園と獣医学部新設問題−動物診療と教育の変遷」中間さんが話題提供、獣医関係者や市民など33名の参加
審議事項
1)2016年度一般会計決算 (2016.4.1〜2017.3.31) および2)2017年度一般会計予算
| 費目 | 16年度予算額 | 16年度執行額 | 17年度予算案 |
収入 | 前年度繰越金 | 1,217,582 | 1,217,582 | 871,501 |
会費 | 582,000 | 377,000 | 843,000 |
本部還元金 | 13,560 | 13,539 | 13,308 |
機関誌収入・寄付金 | 3,000 | 600 | 3,000 |
雑収入 | 160 | 20 | 20 |
| 合計 | 1,816,302 | 1,608,741 | 1,730,829 |
支出 | 本部上納金 | 378,000 | 376,950 | 365,400 |
会費 | 378,000 | 376,950 | 365,400 |
会議費 | 45,000 | 68,820 | 69,000 |
支部大会 | 5,000 | 3,000 | 3,000 |
幹事会 | 10,000 | 0 | 6,000 |
全国・地方区会議 | 30,000 | 65,820 | 60,000 |
事務局費 | 180,000 | 146,130 | 201,000 |
印刷費 | 1,000 | 0 | 1,000 |
通信運搬費 | 28,000 | 33,878 | 34,000 |
払込料 | 5,000 | 2,252 | 5,000 |
備品費 | 1,000 | 0 | 1,000 |
消耗品費 | 10,000 | 5,000 | 10,000 |
事務補助費 | 135,000 | 105,000 | 150,000 |
情宣費 | 5,000 | 0 | 5,000 |
事業費 | 55,000 | 60,000 | 105,000 |
全国・地方区シン | 10,000 | 0 | 60,000 |
協力団体等関係費 | 25,000 | 15,000 | 25,000 |
「科学者集会」補助 | 0 | 30,000 | 0 |
支部シンポ・学習会 | 20,000 | 15,000 | 20,000 |
予備費 | 1,153,302 | 85,340 | 985,429 |
次年度繰越金 | 0 | 871,501 | 0 |
| 合計 | 1,816,302 | 1,608,741 | 1,730,829 |
2016年度特別会計(上関埋立住民訴訟関係)収支報告書 (省略)
2016年度 会計監査報告書 (省略)
3)活動方針
前年度に引き続いて重視する課題として原発問題、憲法9条および平和と民主主義、国民の生活・生存権にかかわる問題を柱に据え、各会員の属する職場、地域、団体で科学者運動を展開する。
山口支部の活動の柱を次のように設定する。
1)平和と民主主義を守るため憲法を守る課題、立憲民主主義の回復と戦争参加をもたらす「平和安全法制」の諸法の廃止の課題にとり組む
2)学問研究の自由と大学の自治を守る。科学技術の真の発展を阻害する大学や公的研究機関での軍事研究に反対する。さらに研究者が自主的に裁量できる予算増を求める
3)核エネルギー問題および自然エネルギーの研究支援にとり組む
4)職場、地域、団体で科学者に要請される課題に積極的にとり組む
5)会員同士さらに非会員との交流を広め、専門を越えた学術の総合的発展をめざす
6)研究者の権利・地位の確立、若手研究者の処遇や学生など若者の成長の支援をめざす
こうした取り組みの中で、中国地区シンポジウムの準備を進め、若い会員の入会で支部活動の活性化をはかる。
4)役員の改選 9名全員再選
5)全国大会代議員候補の選出 順位6位まで予め選出
6)会費未納者に関する申し合わせ
会費の未納が3年を越える場合は、会誌の配付を停止し、同時に支部大会に関わる会員数から除外する。なお、退会の手続きは従前通り、本人からの文書による申出を幹事会で承認することとする。
具体的流れ
事務局に連絡なく、3年を超えて年会費を納めない会員には会誌「日本の科学者」の配付を停止する。会誌を停止された会員は支部規約第2,3条の支部大会にかかる会員数に含めない。
この申し合わせは,2017年10月1日から適用する。但し、現に2年を超えて会費納入のない会員ついては、上述の3年の起点は2016年4月1日に遡ることとする。督促は別便で連絡する。
7)その他
全国役員等は以下の通り。
全国常任幹事(中国地区担当;2017.7~2018.6) 吉村高男
日本の科学者編集委員(中国地区選出; 2017.7~2019.6) 森下 徹
科学者会議の組織のあり方・規約の見直し作業について
支部つうしんNo.179, 180の吉村報告にあるように、ワーキンググループで議論されている。審議のまとめは今後、日本の科学者付録の「事務局ニュース」、地区会議報告、来年の大会議案等で提示されるので、意見は支部事務局宛に出してください。必要があれば支部で議論する場を設けることにします。
中国地区シンポジウム(2018)
地区のローテーション通り、2018年に山口で開催するので、実行委員会で準備を進める。
開催要項は中国地区会議(12月)に決定の予定。
実行委員会体制 (引き続き、幹事会で検討する)
会場 山口大学吉田キャンパス
主題 「平成」後の日本を考える(仮題)
講演題目の例(中国地区会議において各県支部に各1講演を依頼する)
1.憲法「改正」問題
2.基地問題と平和・戦争に関して
3.エネルギー、原発、放射性廃棄物地下埋設問題
4.労基法「改正」問題、ブラック企業、パワハラ、若者の就労に関して
5.インターネット、AIの進歩普及と諸問題 例えば、「AIは人類と共存できるか」
編集後記
安倍首相が3日後に衆議院を解散すると表明したのが9月25日。27日に小池知事が「希望の党」の発足を表明。民進党はこれに全党あげて合流すると報じられたのもつかの間、「希望の党」の踏み絵の前に分裂し、10月2日に「立憲民主党」の誕生と、10日の衆議院議員選挙公示を前にめまぐるしく政局が動いている。編集子では到底、フォローできそうにないし、「つうしん」が読者の手に渡る頃にはどんなドンデン返しが待っているかも知れぬ。従って、今回は支部大会の決定に限定した支部通信です (10月6日) 。
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