日本科学者会議山口支部ニュース 第186号(通算)(2019年4月16日)
つ う し ん
WEB版 2019-4-13

 

イージス・アショア講演会(19.3.3)は大盛況のうちに開催

 安保法制の廃止をめざす山口大学関係者の会の呼びかけで、イージス・アショア講演会実行委員会が結成され、 山口支部からも3名が実行委員会事務局に加わるとともに、賛同団体として講演会の成功につとめてきました。 山口支部は参加チケットを17枚頒布し、支部会員が6名参加しました。これ以外に、会場が満席で資料も足らない というので、せっかく来場しながら帰宅した会員もおり、実行委員会としては予想外の事態となり、混雑したことは 申し訳ないしだいです。資料は山口支部のwebページより入手可能です。
 以下、講演会実行委員会代表の外山氏の講演会成功のお礼のメッセージを転記します。(事務局)


大盛況だったイージス・アショア講演会の報告
3月20日
講演会実行委員会代表 外山英昭
 3月3日のイージス・アショア講演会は、おかげさまで300名に迫る参加者を得て、成功裏に開催することができました。
 参加者数および感想などをみても、萩むつみ演習場へのイージス・アショア配備について県民の関心が高いことが明らかになりました。参加者の多くは高齢者の方でしたが、長時間にもかかわらず熱心に耳を傾けておられました。
 萩市、阿武町、岩国市の現地の声を発言された4人の方々の切実な訴えは、参加者の心に届き、大きな拍手が送られていました。もっともっと、この切実な思いを伝える必要があると痛感しました。
 日本平和委員会の千坂純さんの講演は、「大変わかりやすかった」という感想が多くありました。日米ガイドラインにより軍事一体化が進行していること。 とくに、安保法制の強行成立以降、日米による集団的自衛権行使のための体制づくりが進んでいること、そのために日本全国の米軍基地がそれぞれの役割を担う拠点として機能強化されていることがわかりやすく話されました。 イージス・アショアシステムもその一環として配備されようとしていることもよくわかりました。 と同時に、攻撃型戦闘機の購入、空母の保有など、軍備の拡張、最新鋭化がこれまで以上のテンポで進んでいることを見過ごすことは出来ないという思いを強くしました。
 私たちはこの流れを止め、東アジアの平和を確保しなければなりません。この講演会で学んだことを活かして、 戦争ができる国づくりに反対し、イージス・アショアを配備する計画の撤回を求める声を山口県内さらに全国へ、一層広げていきましょう。

日本平和委員会千坂事務局長の講演

JSA中国地区会議(2019.3.31)の報告

 中国5県のJSA支部の代表があつまり、第54期第2回目の地区会議が岡山で開催された。議題3の各支部の報告からは、 国立大学法人をめぐる情勢の厳しさがうかがえる。

議題1.全国常任幹事会(1月26,27日、東京)の報告

 初日の様子について全国常幹の上園氏(島根支部)から次のように報告があった。組織課題としては滞納や困難支部の問題が議論された。 研究活動では昨秋に沖縄で開催された第22回総合学術集会は357名が全国から集い、成功裏に開催されたこと、各分科会の様子をwebで情報公開してはどうか、さらに報告の質の確保などが議論となった。 学術体制問題では近年厳しさを増す大学での教育研究体制の問題が議論となり、3月31日に東京で「大学の危機をのりこえ明日を拓くフォーラム」を開き、大学予算削減の中で教育研究の土台が弱体化し、 科学技術を支える博士課程進学者の減少が起きていることを訴えることになっていることが議論された。詳細は「事務局ニュース」2月号に掲載されている。
 2日目の討議では社会的活動、「日本の科学者」の発行体制、情報通信委員会、名簿作成について議題となっていたが 上園氏は都合で退座しており、詳細の報告はなかった。なお、定期大会に向けての議案書は常任幹事に回覧中で、 4月の事務局ニュースで各支部に提示され、その議論を踏まえて5月25,26日に全国大会の予定である。

議題2.第29回中国地区シンポの総括

 山口支部からシンポジウムについて報告された(支部ニュース「つうしん」No.185の記事、および「日本の科学者」第54号2号のひろばの記事を参照)。 情勢に即した報告、講演が行われ、充実した内容で盛況に開催されたが、やや詰め込み過ぎた感があった。 参加者はJSA会員が20名で、大阪から福岡までの市民を含み約80名であった。なお、所要経費は135,000円であった。
 次回の地区シンポは2019年あるいは2020年に松江で開催予定である。

議題3.各支部の活動状況と課題

 岡山支部では毎月例会を開催し、文系・理系が交互に報告して、15名程度の参加者がある。 支部の会員数は若手が入っていないので、百名を切るのも近い。活動の中心のI氏が定年の数年後が心配である。 国立大学法人に比べて、私立大学の方が予算的にもよい環境となっている。
 広島支部では近々に30名を切りそうである。大学の移転で会員が集える拠点がなくなったことが響いている。 本部や他支部との窓口は専らI氏に頼る状態。この間、サイエンスコロキウムを1度開催しただけである。 2014年にスーパーグローバル大学(SGU)に指定された広島大学は大変の状況に置かれている。 教員人事は下から発議するが、全学人事委員会で否決される例が少なくない。SGUに貢献しないとみなされる者は採用・昇任されない。 例えばドイツ語圏の研究者でドイツ語の論文業績がいくらあっても、英語の論文がないと降格されての採用となった。 科研費獲得もB以上の実績がないと個人評価の実績にカウントされない。 研究科を4つにまとめる構想があり、全体として大ぐくり化が進み、スペシフィックな講義などは廃止され、英語担当の教員となるように求められようとしている。
 山口支部からは、支部ニュース「つうしん」にまとめている「支部および会員が関係した活動」のように、ミニ講座「YU学び舎」を協賛団体として開催。また3月にはイージス・アショア講演会の実行委員会に加わり成功に貢献したことが報告。
 島根支部では10名前半の組織となっている。2.11建国の日を考える集会では30名の参加があった。 島根大学では新年度より、政府の「働き方改革」に呼応して、建物の出入り(出勤管理)が厳しくなり(出入りにIDカード使用)、時間外の勤務や休日の出勤に制約がかかる。 一方、学生は従前どおりだが、学生だけの実験で事故が起こるとどうなることか心配である。学部長選出は部局から複数の候補を推薦し、学長が選ぶことになっている。 学長に同調しなければ選ばれないとなれば、学部長やセンター長を敬遠する風潮が強まろう。
 鳥取支部では他団体(弁護士会、社保協、自治研、9条の会等)との共同で実行委員会を組織して、市民講座や学習会を年間8回開催した。 市民が50~60名参加し、憲法集会では100名の参加があった。 最近自治研を立ち上げ、支部代表幹事のF氏が理事長となって活動を開始した。

議題4.地区推薦の全国役員のローテーション

 次の表のように確認された。
 年度	地区幹事(補佐)日本の科学者編集委員	中国シンポ担当
 2018	島根	(鳥取)    山口	    山口
 2019	鳥取	(岡山)    島根	    島根
 2020	岡山	(広島)    島根	    島根
 2021	広島	(山口)    鳥取	    鳥取
 2022	山口	(島根)    鳥取	    鳥取
 2023	島根	(鳥取)    岡山	    岡山
 2024	鳥取	(岡山)    岡山	    岡山

議題5.次期第1回中国地区会議

 5月下旬の全国大会、その後の全国常幹を踏まえて、7月に開催の予定とする。
以上(文責:増山)

陸上自衛隊によるレーダー電波の実測調査についての疑問

 3月11日の週に、住民の不安にこたえると称して、陸上自衛隊はむつみ演習場に対空ミサイル「中SAM」を持ち込み、 そのレーダー電波の実測を行い、マスコミや住民にも見学させた。もっとも初日はレーダーが不調で、 2日目から電源車を追加で持ち込んでの実測であった。その結果は3月22日に防衛相が 「地元からのさまざまな意見や指摘を踏まえ懸念を払拭するため、追加の調査が必要だと考えている。 調査で、レーダー実験による実測値が机上の計算値よりも大幅に小さく出た要因を分析し、調査結果に盛り込むためだ。」と記者団に述べたように地元の懸念を払しょくするどころか、実測調査は失敗に終わった。
 2月26日に防衛省が公表した「陸自対空レーダーを用いた実測調査の細部要項について」によると、 中SAMのレーダーもイージス・アショアのレーダーと同様なフェイズドアレイ方式であり、仰角15度以上に設定して、 レーダーから漏れ出るサイドローブの強度を数カ所で実測するとある。実測強度が総務省の「電波防護のための基準への 適合確認の手引き」に記載の式に従うことを確認し、イージス・アショアを導入した場合の周辺への電波強度は その計算式を使って算定して、電波防護指針に言う1mW/cm2以下であるので、安心してください。というような筋書きが見て取れる。
   陸自の実測調査要項の図より
 実測調査が失敗したのは、陸上自衛隊が想定した実験条件が誤っていたのか、レーダーの不調で想定強度の電波が出ていなかったのか、原因はわからない(そもそも中SAMのレーダーの属性は秘密のベールに隠されている)。
 しかし、たとえ自衛隊が想定した実測調査が成功であっても、その結果で住民の心配を払しょくするのは無理であると思われる。なぜなら、通常はレーダーのメインビームが地表に向かないよう、レーダーは高地に設営される。 ところが今回は目の前に西台という標高差が80mある丘を目の前にして、低い位置にレーダーを持ち込んで、「仰角15度以上」で電波を出した。ところで、むつみ演習場から仰角15度でに北西を観測した場合、800km先の平壌上空では地表から275kmより高いところしか望めない。おおよそ、ミサイル発射を監視し、弾道ミサイルの軌道を測定して迎撃ミサイルを発射するには実際的ではない。
 むつみの北西には愛宕山があるので、むつみ演習場の一番高いところから愛宕山の稜線ギリギリに電波を出しても、平壌上空の70kmより高いところしか見えない。 この場合、弾道ミサイル発射1分後からようやく追尾可能であり、数分後には弾道ミサイルは日本近海まで飛来する。このように山に囲まれたむつみは適地とはいえない。
 以上のように、むつみ演習場にイージス・アショアが置かれた場合は仰角5度以下でメインビームが発せられないと、役に立たないはずである。 サイドローブより数百倍以上強力なメインビームの広がり角度やゲインがいくらであるかは「秘密」のようだが、西台や周囲の山にメインビームがかすめる恐れが大であると容易に想像できよう。メインビームの被曝を考えないような実測調査は意味があるのだろうか?
 (山口支部 増山)

1月中旬以降の山口支部および会員が関係した活動

  • 1月19日 みんなの県政をつくる会の学習会で増山会員が「イージス・アショア問題を考える」を講演
  • 2月11日 第53回思想と信教の自由を守る山口県民集会「STOP!戦争動員〜憲法9条から考える〜 講師 池内了「科学と戦争−平和な世界を構築するための科学の役割」 JSA会員は少なくとも3名参加
  • 2月17日 ミニ講座「YU学び舎」第14講 会場:山口大学会館  講師 外山英昭 「教育勅語は何が問題か」 10数名参加、JSA会員は2名
  • 3月3日 イージス・アショア講演会 カリエンテ山口にて 参加者300名 講師 千坂純「何のためのイージス・アショア…平和の流れに逆らう日米軍事戦略とイージス・アショア」 他に萩市、阿武町、岩国市の住民4名が現地報告  支部会員は6名参加(参加チケットは17枚頒布)
  • 3月23日 上関原発を建てさせない山口県民大集会2019  急変した悪天候の中、支部会員は少なくとも3名参加
  • 3月30日 イージスレーダーの学習会「陸自対空レーダーを用いた実測調査の細部要項への批判」 萩市明倫学舎にて 増山会員が講師、他1名が参加し、40名弱の学習会の成功に貢献した

    全国大会の議案の検討をお願いします

     新しい規約の下で、5月25,26日に東京でJSA全国大会が開催されます。議案は全国事務局ニュース4月号として、この支部「つうしん」と一緒に配付されているでしょう。山口支部の1名の代議員、吉村会員が参加予定です。
     議案に関する質問、意見、要望はメールにて masi3yama(at)gmail.com 宛てにお寄せください。

    2019年度 年会費納入のお願い

     点在会員でまだ納付されていない会員は「つうしん」前号に同封の振込用紙で納入をお願いします。振込用紙が不明の方は、下記事務局までお問い合わせください。。

    編集後記

     中国地区会議では、広島大学や島根大学の厳しい状況が報告された。国立大学の教育研究現場の疲弊は大学当局者の政府への忖度でますますひどいものとなっている。個別撃破されるのではなく、科学者会議の運動を軸に大学人の共闘体制は中国地区でできないものであろうか。
    JSA山口支部事務局
       〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
      Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union(at)ma4.seikyou.ne.jp

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