日本科学者会議山口支部ニュース 第188号(通算)(2019年11月1日)
つ う し ん
WEB版 2019-11-10

 

山口支部主催 学術講演会のお知らせ

「自律型ロボット兵器」の開発と禁止運動の現状

講演 小金澤 鋼一 教授(東海大学・制御工学)
  日時 2019年12月15日(日) 13:30〜15:30
会場 山口大学人文学部大講義室
概要 AIを搭載した自律型ロボット兵器(LAWs)の開発競争が進められている。これに対し、多くの著名人、AI・ロボット研究者が反対の声を上げており、また国連においても禁止条約制定の動きがある。本講演ではLAWsの開発の現状と反対運動の状況について報告する。

山口大学で軍事研究?

 防衛装備庁が募集した安全保障技術研究推進制度の研究助成を山口大学が受けると報じられたことに対して、山口大学教員・研究者有志が下記の質問状を山口大学学長へ送付しました。しかし、応答は一切ありませんでした。

質問状

 防衛装備庁は8月30日に2019年度の安全保障技術研究推進制度の新規採択研究課題を発表した。57件の応募の中から、大学2件、公的研究機関7件、企業等7件の16件が採択となった。種別では大規模研究課題(タイプS)が3件、小規模研究課題(タイプA)が7件、小規模研究課題(タイプC)が6件である。このタイプCの1件は、山口大学のA教員が研究代表者である「細胞が持つやわらかい車輪の回転メカニズム解明と移動体への応用」という研究課題であり、「模倣したソフトロボットのプロトタイプを製作して実証する」などとしている。
 近年、ドローンと呼ばれる小型の無人航空機の軍事的利用が大きな話題となっている。偵察活動だけでなく攻撃機として中近東やアフリカの戦場で利用され、誤爆による一般人の被害が出ており、今後、AI技術のさらなる活用で深刻な問題と広く認識されているところである。
 すでに某国は数百のドローンがAIにより互いに協調・連携しながら標的に一斉に攻撃する様子を動画で公開している。また小型化も進み、蜂のように小型で迅速に襲撃するタイプも開発が進んでいるという。航空機だけでなく、地表を気づかれずに接近して偵察・攻撃するタイプも容易に危惧される。
 今回の山口大学の研究者の課題は、防衛施設庁の公募要項にある「2019年度に募集する研究テーマ一覧」の「(4) 生物模倣による効率的な移動体に関する基礎研究」に該当すると推察される。防衛装備庁は基礎研究の先に小型移動体の軍事への応用を展望しているのは上述の昨今の動向から明らかと考えられる。実際、応募者は単なる学術的な基礎研究だけでなく、「ソフトロボットのプロトタイプ」の製作を考えている。
 ところで、山口大学では2017年に「防衛省等から資金提供を受ける研究協力に関するガイドライン」を制定し、2018年にはこれを一部改正して「防衛省等が公募する研究課題への応募等に関するガイドライン」としている。これによると、
 ・申請者は事前に学長に申し出る
 ・学長は審査委員会(当分の間は役員会が行う)を設置する
 ・許可できるものは、その研究内容が基礎的な研究であることが明確に判断されるもののみとし、軍事目的(防衛目的を含む。)の研究は、認めない。
とされている。
 確かに、ウェブで公開されている第197回役員会議事要旨は、5月20日に今回の応募を認める決定を下したと記している。しかし、今回の研究課題の詳細や詳しい審査経過や内容は公表されていない。
 そこで、一体、役員会はいかなる基準で「基礎的な研究であることが明確に判断される」とし、かつ「軍事目的(防衛目的を含む。)の研究」ではないと判定したのか、審査結果の説明責任を果たすため、ぜひともわかりやすく説明していただきたいと考える。
2019年9月5日
日本科学者会議山口支部(代表幹事 増山博行)
山口大学教員・研究者有志

2019年度(54期)山口支部定期大会の報告

 10月6日(日)午後、山口大学理学部において、定期大会が開催されました。会員42名のうち出席者は11名でしたが、委任状が14名あり大会は成立しました。9月に配布の大会議案にそって議論され、一部字句修正と補足の上、議案は全会一致で承認されました。以下、採択された議案を掲載します。但し、決算・予算については総額のみ。

報告 1年間の歩み

・11月3日 2018年度(53期) JSA山口支部大会  46名の会員中、委任状提出者19名、出席者11名で成立し、報告及び議案が承認された
・11月3日 第29回JSA中国地区シンポジウム「東アジア情勢と憲法改正問題」 参加者は約80名、内JSA会員は20名、県内参加者は会員16名、非会員48名。報告・講演のテーマが昨今の政治状況の中で多くの国民が関心もっているものであり、市民の参加が多く、質疑も活発であった。講師を除いても、大阪から福岡までの府県から会員・市民の参加
・11月18日 ミニ講座「YU学び舎」第13講 会場:山口大学会館 参加者45名余   山口大学経済学部教授の立山紘毅氏が「不思議な話−−誰から何を守るのか分からないミサイル防衛」のテーマで話題を提供
・1月19日 みんなの県政をつくる会の学習会で増山会員が講演「イージス・アショア問題を考える」
・2月11日 第53回思想と信教の自由を守る山口県民集会「STOP!戦争動員〜憲法9条から考える〜 講師 池内了「科学と戦争−平和な世界を構築するための科学の役割」 JSA会員3名参加
・2月17日 ミニ講座「YU学び舎」第14講 会場:山口大学会館 講師 外山英昭 「教育勅語は何が問題か」 10数名参加、JSA会員は2名
・3月3日 イージス・アショア講演会 カリエンテ山口にて 参加者300名
  講師 千坂純「何のためのイージス・アショア…平和の流れに逆らう日米軍事戦略とイージス・アショア」 他に萩市、阿武町、岩国市の住民4名が現地報告   支部会員は6名参加(参加チケットは17枚頒布)
・3月23日 上関原発を建てさせない山口県民大集会2019  急変した悪天候の中、支部会員は少なくとも3名参加
・3月30日 イージスレーダーの学習会「陸自対空レーダーを用いた実測調査の細部要項への批判」 萩市明倫学舎にて 増山会員が講師、他1名が参加し、40名弱の学習会の成功に貢献
・3月31日 JSA中国地区会議(岡山にて) 吉村会員、増山会員出席
・4月14日 ミニ講座「YU学び舎」第15講 会場:山口大学会館   講師 吉岡光則(平和委員会) 「日本は本当に独立国か?−米軍基地の町に生きて思うこと−」    22名参加、JSA会員は3名
・5月25,26日 全国JSA定期大会(東京にて) 吉村会員出席
・6月8日 緊急学習会「『イージス・アショアの配備について』を学習し、検証項目を整理する」  会場:萩明倫学舎 主催:萩市民の会 コメンテーター 増山会員  市民約30名参加
・6月16日 ミニ講座「YU学び舎」第16講 会場:山口大学会館 増山博行が「防衛省、山陽小野田に宇宙監視レーダーを設置」を講演 24名参加、JSA会員は3名
・7月27日 JSA中国地区会議(岡山にて) 吉村会員出席
・7月27日 「適地調査の結果&防衛省の検討結果の説明」に係る学術シンポジウム   主催:イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会 会場:むつみコミュニティセンター   130名参加、JSA会員は1名
・7月28日 原水爆禁止2019年世界大会・科学者集会in福岡 会場:福岡県 増山会員が「陸上イージスとDSレーダー −ミサイル防衛・宇宙監視の新基地が山口に−」を報告
・8月9日 山口折鶴の会「平和トークのつどい」山口市内;市民20名参加;増山会員がイージス・アショアについてトーク
・8月17日 「イージス・アショアを考える」増山会員が講演; 第22回 山口・平和のための戦争展 2019、主催:実行委員会;山口市民会館展示ホール;市民30名参加
・9月5日 安全保障技術研究推進制度の課題採択に際して、山口大学長宛質問状発送
・9月19日 同上で山口大学長に回答を督促
・10月5日 山口市革新墾で松原会員が講演「アベ改憲と私たちのくらし」

審議事項

1)2018年度一般会計決算 (2018.4.1〜2019.3.31)
    収入  1,458,622-
    支出  1,458,622- (繰越  871,977- を含む)

 2018年度特別会計収支報告書
   上関埋立住民訴訟関係  新規収入・支出なく、繰越 60,850-
 第29回中国地区シンポジウム関係
    収入 本部からの補助金  30,000-
       支部会計からの繰入 79,715-
       カンパ       25,200-
       合計        134,915-
    支出 講師謝礼・交通費  126,000-
       ポスター印刷・配送  6,353-
       文房具・郵送代    2,562-
       合計        134,915-

2018年度 会計監査報告
    会計監査吉村氏の確認印

2)2019年度一般会計予算
   収入  1,737,609- (繰越金 871,977- 本部研究助成金 200,000- を含む)
   支出  1,737,609- (研究助成の支出 200,000- 予備費 782,309- を含む)

3)活動方針
 前年度に引き続いて重視する課題として原発問題、憲法9条および平和と民主主義、国民の生活・生存権にかかわる問題に加え、自衛隊のイージス・アショア基地、宇宙監視基地設置問題、大学での軍事研究および教育研究のあり方に関する問題を柱に据え、各会員の属する職場、地域、団体で科学者運動を展開する。
 山口支部の活動の柱を次のように設定する。
1)平和と民主主義を守るため憲法を守る課題、立憲民主主義の回復と戦争参加をもたらす「平和安全法制」の諸法の廃止の課題、および陸上設置型イージスシステムの基地設置反対等にとり組む
2)学問研究の自由と大学の自治を守る。科学技術の真の発展を阻害する大学や公的研究機関での軍事研究に反対する。さらに研究者が自主的に裁量できる予算増を求める
3)核エネルギー問題および自然エネルギーの研究支援にとり組む
4)職場、地域、団体で科学者に要請される課題に積極的にとり組む
5)会員同士さらに非会員との交流を広め、専門を越えた学術の総合的発展をめざす
6)研究者の権利・地位の確立、若手研究者の処遇や学生など若者の成長の支援をめざす
当面の具体的取組の提起
 @イージス・アショアおよび宇宙監視レーダーの設置問題についての学習会・情宣物の作成に協力する
 A阿武町の地域再生の取組についての分析し、2月の中国地区シンポ(島根)でレポートする
 B軍事研究・AI兵器の危険性に関する講演会を共催で成功させる
 上記@とAはJSAの研究助成に応募して、その成果を公表する

4)役員の改選
  田中会員から鈴木会員に幹事が交代。他は留任。

5)全国大会代議員候補の選出
  吉村会員以下、4名を補欠で選出。


9月以降、山口支部および会員が関係した活動

  • 9月5日 安全保障技術研究推進制度の課題採択に関して、山口大学関係の会員有志が山口大学長宛質問状発送
  • 9月19日 同上で山口大学長に回答を督促
  • 10月5日 山口市革新墾で松原会員が講演「アベ改憲と私たちのくらし」 会員2名参加
  • 10月6日 支部定期大会
  • 10月12日 第2回ミサイル基地をつくらせない県民大集会(阿武町にて)
  • 10月20日 ミニ講座YU学び舎「石炭火力発電所と環境アセスメント」 会員3名参加, 市民30名参加

    編集後記

     山口大学が防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度の研究助成金をついに受け入れた。2015年の制度創設の年に応募があり不採択となったことは分かっているが、その後は採択しか公表されていない。2017年の学術会議の声明を経て、同年に大学はガイドラインを制定、2018年に一部改訂しているが、学内からの応募を考慮して改訂したと推量。2019年では全国の大学からの応募は過去最低の4件であったが、そのうちの1件となった。他大学が遠慮する中で、採択倍率が下がった?採択された研究者は毎年のように競争的資金を獲得しており、この助成金に合わせるかのごとき研究課題・計画を出す必要もないと思うのだが?
     大学当局は1〜2頁に示している質問に回答しないことを決めたようだ。質問にすら耳をふさぐ態度は全く解せない。国立大学法人のすることだろうか?
    JSA山口支部事務局
       〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
      Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union(at)ma4.seikyou.ne.jp

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