日本科学者会議山口支部ニュース 第192号(通算)(2020年12月16日)
つ う し ん
WEB版 2020-12-18

 

 10月10日、オンラインで開催された日本科学者山口支部会議定期大会において、下記の決議が採択されました。決議文を県内のマスコミ各社にメールで配布すると同時に、首相官邸ホームページの「ご意見・ご感想」 URL http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html に投稿しました。

2020年度支部定期大会決議

学術会議会員の任命を拒否した菅総理大臣の作為を糾弾する

 日本学術会議が推薦した新任会員候補者のうち6名の任命を菅総理大臣が明確な理由を示すことなく拒否したことは明らかな違法行為であり、直ちに推薦通りに任命することを求める。
 第二次世界大戦に先立ち、時の政府の見解に反する学説を唱えたとして学者が弾圧を受けたこと、また、惨禍をもたらした大戦に科学者が協力させられたことの反省の上に、戦後、憲法に学問の自由が明記され、政府から独立して職務を遂行する日本学術会議が設立された。日本学術会議法では、学術会議が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し」(第17条)、会員はこうした学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(第7条)と規定されている。ここには政府が任命を拒否したり、勝手に任命する余地はない。
 菅氏は安倍内閣の官房長官として内閣法制局長官人事に介入し、大半の法学者の反対を無視して「解釈改憲」で「安保法制」を合憲とする法制局の忖度を引き出した。総理大臣として「反対者は去ってもらう」と公言して、事前に法制局の「合法性」を得ていると吹聴するが、これは法治主義も投げ捨てた暴君であるかの振舞いである。
 わが国の科学者を代表して科学の発展を図るという使命を帯びた学術会議会員の選考に時の政府の意向が反映されてしまうと、政府の政策に忖度した審議と化し、学問の自由を歪めることになろう。また、任命拒否は科学者への名誉毀損とも言え、政治権力の圧力は政府の考えと異なる思想信条を持つ科学者の学問の自由への重大な侵害となる。
 憲法と法律に忠実であるべき政府・内閣のあるべき姿に反する行為を直ちに改めるように求める。これは自由で民主的で平和な国家を希求する国民の声である。
2020年10月10日
日本科学者会議山口支部定期大会


学術会議会員任命拒否問題の大学教員有志が提案した署名活動に取り組み

 菅総理は日本学術会議会員の任命拒否した理由について、まともな理由を説明出来ないまま経過しています。その一方で、政府や与党からは学術会議に軍事研究拒否の声明を撤回せよとか、予算が多すぎる、あるいは国から独立すべきだ、などの学術会議への干渉が述べられています。
  こうした中、山口大学の教員有志が次のような見解と署名活動を提起しました。

日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、6名の任命を求めます

山口大学教員有志
 私たち大学教員・科学者有志は、日本学術会議が発出した2020年10月2日付「第25期新規会員任命に関する要望書」に賛同し、下記の2点が速やかに行うことを強く求めます。
 1 日本学術会議が推薦した会員候補者が任命されない理由を説明すること。
 2 日本学術会議が推薦した会員候補者のうち、任命されていない方を任命すること。
   日本学術会議法では、学術会議が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し」(同法第17条)、会員はこうした学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(同法第7条)と規定しています。 「基づいて」という法の解釈について、会員候補が会員の推薦に変更された2005年の法改正時に、推薦されたものを任命するという意味であると政府は答弁していました。こうした法解釈を国会に諮ることもなく、また公表することもなく勝手に変更したという論理がまかり通るならば、わが国は三権分立の民主的な法治国家であるといえるでしょうか。
 首相は任命拒否した理由を説明することなく、「総合的、俯瞰的観点から」とか、「会員の偏りが問題だ」「閉鎖的な既得権益」団体だとか、学術会議のあり方について見解を述べています。 これらが根拠のないことは11月12日の学術会議会長の記者会見資料において、具体的データをもとに反証されています。
 また、首相は「推薦前の調整がされなかったから」と国会で答弁していますが、これこそ、「調整」あるいは「忖度」によって、時の政府の意のままに学術会議をコントロールするという意図の表れではないでしょうか。 事前調整に名を借りた政府による学術会議への介入こそ、学術会議法から逸脱していることは明確です。
 1949年1月22日第1回学術会議総会では、「われわれは、これまでわが国の科学者がとりきたった態度について強く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うものである。」という科学者としての決意声明が出されました。
 近代的民主国家では政府が学術・科学の発展方向を捻じ曲げることはせず、科学者と学界の自由な活動にゆだねています。これが日本国憲法で保障された学問の自由です。特定の学説を国家権力が排除することは、歴史を戦前に逆行させることになるでしょう。
 国民の信託に応えるべく、教育研究を担っている大学教員として、また学術の自律的発展を願っている者として、今回の首相による恣意的な法解釈変更と時の政府による恣意的な学術会議会員の選択的任命、さらには日本学術会議のあり方への乱暴な介入姿勢に強く抗議します。冒頭引用した10月2日付の日本学術会議の要望を政府は速やかに受け入れることを求めます。
    2020年11月18日
          連絡先  山口大学教職員組合 (Fax送付先 083-921-0287)
               日本科学者会議山口支部 (署名送付e-mail yama40818(at)gmail.com)

 JSA山口支部事務局では、支部会員が参画したこの署名活動をサポートし、署名の集約に協力しました。その結果、12月2日の第1次集約に74名の署名が集まり、首相官邸あてに要望意見として送付しました。
 署名活動は継続中で、上記連絡先のe-mailアドレス宛にメールで賛意と「ひとこと」の意見をお寄せ下さい。なお、署名の呼びかけ者は山口大学の教員有志ですが、県内の大学人、科学者、文化人およびその周辺の市民の方に広く呼びかけています。

<第1次署名集約で寄せられた「ひとこと」(順不同)>

 ・政府と意見の違う候補は任命されない学術会議は存在意義を失う。日本社会が当面する諸課題に政府とは違った選択肢を提言することに国民的利益がある。  ・日本を独裁国家にしたくない。  ・自由に発言できることの大切さを訴えたい。  ・学者6人の人権侵害だけでなく、学問の自由、表現の自由への侵犯「事件」であり、許してはならない。社会科学を切り捨て、軍事技術の研究開発に非協力な大学は切り捨てようとしている。  ・全くひどい  ・総合的俯瞰的に見れば、戦争への道  ・断じて許されないことです。何としても6名全員の任命を!  ・とりあえずひと声あげます  ・研究者の分断と切り崩しを止めるためにも、介入をストップさせましょう。  ・学問の自由を守れ!  ・菅政権の強権政治です。  ・学問への政治の介入は許せない!!  ・理由の説明が必要です  ・黙ってはおられない  ・任命拒否は憲法違反  ・学問の自由の侵害は、研究者だけの問題ではない。  ・1930年代に逆戻りでは、たまったものではありません。ものいえぬ社会の再来は、何としても阻止しなければ。  ・歴史の教訓を活かすこと!  ・政府による思想・信条の自由の侵犯は憲法違反  ・学問の自由は,平和の基礎  ・全く許せないこと!  ・思想差別に見えます  ・不当な対応に反撃を  ・学術会議の存在意義と任命問題は分けるべき  ・首相の6名の任命拒否に強く抗議します。これまでの慣例にならい、学術会議からの申請通り、外された6名の候補者を直ちに承認されるように願います。  ・恣意的に任命拒否することは許されない  ・学問の自由を犯すな!  ・学問の自由は私たち市民の生活にも反映されます  ・学問は政権の意向に左右されるべきもない  ・政府は恥を知って下さい


JSA山口支部定期大会の報告

   日時:10月10日(土),10時〜12時     会議:オンライン会議
議事次第
 1.議長選出 大和田会員を選出した
 2.定足数の確認(会員数41名,過半数21名)
   会議出席者11名、委任状13名,合計24名,大会成立(なお、大会途中に委任状1通が届き、14通となった)
開会あいさつ 増山支部代表幹事
議事
報告事項
 1.活動報告(増山会員)
  増山会員から資料に基づき,2019年度の報告があり,それらに対して鈴木会員から9月の全国大会の報告、増山会員から全国事務局ニュースは今年度よりJSAホームページの閲覧となったむね補足説明があった.
審議事項
 1.2019年度会計決算(笠野会員)
  1)2019年度一般会計決算
  2)2019年度特別会計収支報告
  3)2019年度JSA本部研究助成金特別会計収支報告
    笠野会員から資料に基づいて上記3点について説明された.
 2.2019年度会計監査報告(吉村会員)
    吉村会員から資料に基づき2019年度決算書についての監査報告がなされ,会費未納者への働きかけをすることを付記した上で,上記の決算案とともに承認された.
 3.2020年度一般会計予算案(笠野会員)
   笠野会員から資料に基づき2020年度予算案が示され,承認された.
   併せて、読書会員については郵送料と諸経費を加算して年会費6千円とすることが確認された。
 4.活動方針案(増山会員)
   増山会員から資料に基づき2020年度の活動計画が示され,承認された.
 5.役員の改選(大和田会員)
   大和田会員から資料に基づき2020年度の役員候補が報告され,提案通り承認された.
 6.全国大会代議員候補の選出(大和田会員)
   大和田会員から資料に基づき2020年度全国大会の代議員候補が示され,順位の固定化はしないという了解の上で承認された.
 7.大会決議案(松原会員)
   松原会員から資料に基づき日本学術会議会員の首相任命拒否に関する支部決議案が示され,意見交換の後,一部修正の上承認された.
 8.その他
   全国事務局報告
   次回YU学び舎について:10月18日 14時〜カリエンテ山口
    「高レベル放射性廃棄物」はふやさない,埋めない−「科学的特性マップ」の問題点−
     話題提供者 関根一昭(地学団体研究会「科学的特性マップ」を考える会 世話人)
   科学者会議山口支部のHP変更 新URL http://www.e-hagi.jp/yama_jsa/


9月以降、山口支部および会員が関係した活動

  • 9月5日 支部幹事会をZoomで開催し、幹事全員が参加
  • 9月6日 山陽小野田市で「宇宙監視レーダーについて」学習会が開催され市民12名が参加(増山会員がZoomでレポート)
  • 9月6日 「つうしん」No.191を発行
  • 10月10日 支部定期大会をZoomで開催
  • 10月18日 YU学び舎第21講 「高レベル放射性廃棄物」はふやさない,埋めない−「科学的特性マップ」の問題点−、話題提供 関根一昭さん をカリエンテ山口とZoom配信で開催
  • 11月下旬 学術会議会員任命拒否問題の大学教員有志が提案した署名活動に取り組む
  • 12月4〜6日 日本科学者会議第23回総合学術研究集会(東京;Zoom開催) 5日午前C2平和問題分科会で増山会員が「計画中止に追い込まれたイージス・アショアと山口県の地元のたたかい」と題して報告
  • 12月8日 第40回山口平和行進出発式(9時、県庁藩庁門前) 増山会員が来賓挨拶でイージス・アショアの配備撤回と学術会議会員任命拒否問題に関して述べた。
  •  

    編集後記
     日本学術会議から推薦された105名のうち、6名を恣意的に任命しなかったことをめぐり、菅総理や加藤官房長官らの説明は支離滅裂である。10月13日に野党が国会内で行ったヒアリングでの前川元文部科学事務次官の自らの経験に基づく推測が当を得ているように思われる。 任命しない6名の名簿を作成したのは杉田官房副長官(元警察庁官僚)で、これを当時の菅官房長官が確認。この前川氏の推察通りだとすると、その後、管氏は首相となったので、首相としては任命時に99名の任命された名簿しか見ていなくとも、どういう6名が外れているかはよく知っていたはず。 それを「パンは食べたが、ご飯は食べない」という「ご飯論法」の屁理屈で押し通そうということになろう。一国の総理とは思えない論理!嘆かわしい限りである。 (10月14日、編集子;編集が延び延びになって、その後の事態について書きたいことは山々ですが、紙面の関係でこれまで。)
    JSA山口支部事務局
       〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
      Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union(at)ma4.seikyou.ne.jp

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