日本科学者会議山口支部ニュース 第197号(通算)(2022年7月1日) |
つ う し ん |
WEB版 2022-7-12 |
日本科学者会議第53回定期大会(オンライン開催)報告昨年度と同様に、1日目は5月28日、2日目は6月12日にオンライン開催となりました。山口支部には1名の代議員枠があり、昨秋の支部定期大会で5名の代議員候補を選出していましたが、日程の都合等を支部事務局長が調整し、1日目には松原会員、2日目には鈴木会員が代議員としてオンライン参加しました。以下、両代議員からの報告を編集の上記載します。1日目(5月28日) 1) 議事について 当初予定の議事に若干の変更があった。「情勢」と「57期活動報告」、「2021年度決算報告」、「会計監査報告」については、 審議の後、承認されたが、「58期活動方針の採決」が大会第2日目の総合討論の後に行われることに変更となった。 その理由は、大会議案中の「58期活動方針」の文面について若干の修正要請があり、それを踏まえた修正案ができてからでないと採決できないだろうとなったためである。 2) 報告について 大会議案の報告の後、研究企画部報告(研究助成報告、研究委員会報告)、57期問題別委員会活動報告、科学・技術政策委員会情勢報告、57期地区支部活動報告が行われた。 大会議案は、『日本の科学者』2022年5月号の付録として配布済みだが、その後、「情勢」の項に若干の修正が加えられた。大きな変更点として、「(7) 経済安全保障推進法と新国家安全保障戦略」、「(8) 国際卓越研究大学」の項が追加された。 3) 審議内容について 自由な意見交換が中心となった。大きな議題として、会員(特に現職教員)減の状況が続く中、どのように会員拡大を図っていくかかの問題が提起された。 それに関して、大学院生を含む若手研究者に対するアピール性を高めるため、若手の発表機会を増やすとか、査読制度をより強調する工夫が必要ではないか、文理協同科研を作ってはどうかといった提案が出された。 また、魅力的なJSAを作っていくための大胆な提案として、JSAでバーチャル(仮想)大学院を作ってはどうかという意見もあった。この発想の参考になるものとして、現在、名古屋大学大学院(環境学研究科)で進められている、社会と大学による「知の共創プログラム」があるとのことで、現職教員にとどまらない幅広い多様な人材を活用できる点でJSAの強みを活かせるのではないかという提案だった。 「日本の科学者」を電子化してはどうか(購読者を増やす、郵送料を減らす)という意見も提案されたが、これに対しては、完全電子化すると対応できない支部も出てくるのではないか、必ずしも大幅なコスト削減にはならないのではないかという反論も出て、全体で議論を詰める必要もあるため、今後事務局で検討していくことになった。 会員情報リストの作成問題も議題となったが、名簿の管理や、会員情報をどのように活用していくか等について、さらに今後の検討課題となった。 その他、JSA事務所移転計画(進行中)に関する質問、ピア・レビュー体制の整備、支部で行われるシンポジウムの内容について情報共有できないか等の意見が出された。 (文責:松原) 2日目(6月12日) 1)大会決議について 2つの決議が議論され、①「決議(案)学問の自由と大学の自治を破壊する経済安保法と国際卓越研究大学法を廃止せよ」については、修正提案されたものが採択された。 議論の中では、決議の採択とともに各地で市民に対して学問の自由と自治について理解を深めるような取り組みの重要性が指摘された。 とくに理研の研究員の大量解雇の問題が議論となり、各地における支部の活動と市民のなかで日常的な関心の高まりがなければ世論は大きくならないのではないかとの提起であった。 文言を修正されたものは、次のように公表された もう1つの、②「決議(案)ロシア政府はウクライナ侵略戦争をやめ、一刻も早く人道危機を終わらせよ」については、起草委員会から、原案の宮城支部のものから修正されたものが提案されたが、 代議員の中で原案と修正案で意見が分かれるとともに両案の採択については、それぞれに反対者が多数いたため採択自体が見送られた。 緊迫した国際情勢の中でどのような対応を国際社会や日本に求めるのかによって、JSAとしてのスタンスの問われる重要な問題であるため、採択をめぐって意見が割れるような状態は避けることとなったものである。 2)会員拡大について 各地の拡大の経験が共有されたが、東京支部からは現在JSA会員の研究者と労働組合で最低賃金の取り組みを進めており、その中で、労働組合員にJSAの活動を理解してもらい入会が進んでいることが報告された。 また、愛知支部からは現在名古屋大学が進めているオンライン大学院をモデルとして、JSAにおいてもオンライン大学院を構想できないかという提起があった。 JSAの学際性や研究者の多さ、オンラインによる経費の低額さ、退職後教員の活躍の場であるとともに若手研究者の育成の場として、今後JSA内で検討していくことが提起された。 その他には、日本の科学者のオンライン読書会(著者も交えた交流)や、若手特集の提案などされている。 3)予算・新執行部について 予算は提案の通り採択されました。新執行部についても、全員承認され、次期事務局と代表幹事の紹介があった。 (文責:鈴木) 大会報告は以上です。なお、JSAの役員26名の内、1名が中国地区担当幹事であり、中国地区では申し合わせにより5県のローテーションで幹事を推薦しています。今回は山口支部が担当幹事を出すことになっており、支部の大和田事務局長が中国地区推薦で選出されました。 (参考) 日本科学者会議幹事会声明「ロシアによるウクライナ侵攻に反対します」2022年2月27日 |
原発をつくらせない山口県民の会第26回総会・学習会が開かれました5月21日に山口市内で原発をつくらせない山口県民の会の第26回総会が開かれ、会の筆頭代表委員の増山博行氏が挨拶をしました。 総会では1年間の取り組みを総括し、上関原発をつくらせないために、引き続き、地道な取り組みを継続していくことが確認されました。 2011年の福島原発事故の後からはじめた金曜日パレードは最近では月1の取り組みで山口市内中心街をめぐっており、来年3月の200回の節目を迎えます。総会で採択された運動方針(抜粋)を資料として掲載します。 (4)山口市で毎月第2金曜日に行われている「反原発金曜パレード」について、その中心母体としてすすめていきます。さらに各団体や個人にも参加を呼びかけます。 (5)国のエネルギー政策の問題点を明らかにし、再生可能エネルギーの普及を幅広く県民に訴えていきます。 (12)中国電力に対し、上関原発建設計画を全面的に断念するよう求めます。 (13)山口県に対し、上関町田ノ浦の埋め立て工事を再開させないよう、さらに埋め立て免許の延長許可を撤回するよう求めていきます。 総会に引き続いて、学習会が開催されました。講師はJSA福岡支部の岡本良治氏で、核兵器や原発に詳しい原子核理論の物理学者であり、 近年、CO2増加による気候変動が不可逆的に進むことも核兵器同様に地球の全生物への脅威であると考えて研究を進めています。 今回はロシアによるウクライナ侵略戦争という深刻な事態が生起する中、山口県民の会事務局からの要請に応え 「気候危機への対処に原発を使うべきか -ロシアによるウクライナ侵略戦争の暫定的教訓をふまえて-」と題して1時間の遠隔講演を行いました。 会場外のオンライン参加を含めた20数名の参加者との間で30分の活発な質疑がありました。 岡本氏の講演概略を紹介します。 ・ロシアによるウクライナ侵略戦争は安全保障とエネルギーが強く関連していること、および脱ロシア・エネルギーの緊急性を明らかにした。 ・気候危機の影響緩和のための手段の一つとして、原発を使うべきではない多くの理由がある。 原発は出力調整が困難であり、化石燃料発電との併用が不可避 稼働に伴い放出する放射能は広範囲に、確率的に影響をもたらす 過酷事故のリスクは否定できないし、高レベル放射性廃棄物の処理のあてはない 安全対策強化に伴う原発電力の価格上昇で、市場原理では成り立たなくなってきている 原発のライフサイクルで見ると火力発電よりは少ないが風力や太陽光発電よりもCO2排出量は多い ミサイルによる攻撃を防げる原発は世界に一つもないし、核兵器そのものよりも原発が持つ死の灰は膨大であり、破壊されれば広範囲に甚大な被害をもたらす。 ・しかし、原発反対を、原発を必要悪と考えている人々にも納得してもらうには、そのための実現可能な、説得力の高い代替手段を提示することが必要である。 ・気候危機の影響緩和のための節目の2030年までの移行戦略と脱ロシア・エネルギーのために、相対的に即効性の高い手段は、まず省エネの深堀り(エネルギー需要の低減、エネルギー効率改善)、次に再エネ開発の加速化である。 なお、講演のビデオの視聴を希望する人はJSA山口支部事務局に申し出てください。 |
12月以降、山口支部もしくは会員が関係した活動 (昨年8月~11月は「つうしん」No.195の定期大会報告の中で記載済み) ・12月5日 ミニ講座YU学び舎第26講「日本に風力発電はいらない!石狩湾岸で抱える様々な問題」 ・12月6日 山口県ゆきとどいた教育を進める会の県議会議長あて請願に参加 ・1月12日 中国支部会議(オンライン)に参加 ・3月12日 さよなら原発アクションinやまぐちの集会・デモに参加 ・3月22日 山大関係者九条の会に共催した講演と学習の集いを開催、講師は松原会員「敵基地攻撃能力保有論と憲法9条」、集会アピール「ロシアはウクライナ侵略戦争をやめ、直ちに撤退すべきである」を発出 ・5月3日 憲法を守る山口集会に参加、松原会員が講演会の司会 ・5月21日 原発をつくらせない山口県民の会総会での挨拶と学習会の司会を増山会員 ・5月28日、6月12日 第53回定期大会にオンライン参加 第30回日本科学者会議・中国地区シンポジウムのご案内 「ポストコロナの社会と地域を考える」2022年11月12日 鳥取大学にて 申し込みはこちら |
編集後記
JSA第53回定期大会に提案された文書を見ると、
(4) 軍事的緊張と辺野古新基地 東アジアと東ヨーロッパでは,軍事的緊張が高まっており,一触即発の状態にある.(中略)さらに,ロシアのウクライナ侵略に乗じて,与党内には軍事費の大幅増額や「核共有」を求める動きが強まっている. (6) ロシアによるウクライナ侵略戦争 2022年2月24日,ロシアがウクライナへの侵略戦争を開始した.ロシア軍は軍事施設だけでなく居住区域や子どもを含む一般国民を攻撃対象としている. ウクライナへの攻撃にはクラスター爆弾や燃料気化爆弾さえ使用されているが,プーチン大統領は核兵器の使用さえ辞さない構えを示している. これはウクライナ人の平和に生きる権利を否定し,全人類に挑戦する暴挙である.ウクライナでの殺戮を止めさせ,核戦争の危機を回避することは全人類にとって喫緊の課題である. という記述が「情勢」の章にあり、これは大会第1日目に一部字句修正の後に承認されたという。しかるに、活動方針案にはウクライナの文字も、敵基地攻撃能力の記述もない。 さらに、大会第2日目ではウクライナに関する決議案に賛否意見が割れて採択に至らなかったという。 「情勢」に関して承認しているのであるから、その観点からのウクライナ決議の採択が出来なかったことは残念というしかない。 なお、JSA幹事会としては前出のように「ロシアによるウクライナ侵攻に反対」の声明を2月27日に出している。 |
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