日本科学者会議山口支部ニュース 第199号(通算)(2023年1月15日)
つ う し ん
WEB版 2023-1-15

 

支部幹事会が開催されました

 オンライン開催の幹事会は12月12日、9名の幹事全員が参加して開催され、①本部役員の推薦について、 ②敵基地攻撃能力保有の安保3文書に関する幹事会声明について、③原発政策の転換逆行と上関原発について、 ④学術会議会員選考に関する政府の介入について、⑤YU学び舎第29講の山口大学会館使用不許可問題と 世界平和統一家庭連合の今日的問題について、協議もしくは報告がありました。
 ①については、支部として今回候補者の氏名をあげて推薦するに至らず、中国地区あるいは 全国事務局内に設けられたWGの議論の推移では再度必要な検討をすることになりました。 ②、③については幹事会の議論を踏まえ、文案が整理され、その後の事態を踏まえた反対・抗議声明が 1月の持ち回り幹事会で了承されたので、以下に記されています。④については全国組織で提起される 署名活動などに積極的に参加することになりました。

幹事会声明

専守防衛から敵基地攻撃への安保政策の大転換に反対する

 自民・公明両党は、2022年12月2日、これまでの専守防衛から「敵基地攻撃能力(反撃能力)」保有へと、 戦後安保政策の大転換に合意した。防衛費は長らくGDP比1%程度とされてきたが、岸田総理は敵基地攻撃能力のために これを5年間で2%に倍増することを指示した。国会閉会後の12月16日、先の合意内容を反映した「国家安全保障戦略」、 「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の、いわゆる安保3文書が閣議決定されたが、これは憲法の平和主義を 根底から覆して大軍拡に舵を切るものであり、内閣の一存で決められるようなものではない。
 わが国は、第二次世界大戦の厳しい反省のうえに、憲法前文で平和的生存権を保障し、第9条第1項で 「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と 「戦争放棄」を定め、同第2項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない」と「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を規定している。これらの規定は、 国民の基本的人権を保障するために憲法によって国家権力を抑制するという立憲主義に則って平和を実現しようとするものであり、 国際法における戦争違法化の潮流の中に位置づけられる。政府は、自衛隊の創設により、9条2項の「戦力」に 「自衛のための必要最小限度の実力」は当たらないとの解釈変更をしたが、その「自衛」は長らく個別的自衛権の枠内に踏みとどまってきた。
 こうした戦後の平和政策に重大な解釈変更を企てたのが、安倍内閣による2014年の閣議決定、そして2015年の安保法制の制定である。 集団的自衛権の行使容認に踏み切り、自衛隊の活動に関する地理的・時間的制約をなくして外国軍隊と共同歩調をとることを可能とした。 しかしながら、その時点では、敵基地攻撃を目的とする装備体系を自衛隊は保持しておらず、集団的自衛権の行使として 敵基地を攻撃することは想定していないとされていた。
 政府は、2014年に、兵器輸出を原則禁止とした「武器輸出三原則」を撤廃し、それに替わる「防衛装備移転三原則」 によって輸出の要件を緩和したが、今回の閣議決定では、後者の運用指針を見直してさらに要件を緩和し、 官民一体となって「防衛装備移転」を進めようという。これは、まさに軍拡への動きに他ならない。
 今回の安保政策の大転換には、ロシア、中国、北朝鮮の振る舞いが理由としてあげられている。しかし、軍事的本質は、 アメリカの軍事戦略の転換により、わが国をアメリカ防衛の前線基地とし、あるいはアジア太平洋地域での軍事行動に 自衛隊を組み入れたいという思惑であることは明らかである。射程1,000kmを超えるトマホークの導入が「反撃能力」 のために必要と称しているが、米軍が提供する軍事情報なしに自衛隊単独の能力で1,000km先の「敵基地」を把握し、 攻撃は出来ない。「敵」の攻撃準備を察知して攻撃することはほとんど不可能である。そもそも、「反撃」能力というが、 その内容は、実際に攻撃を受けていなくても、相手国がミサイル発射準備に「着手」したと判断した段階で攻撃することも想定している。 そうなれば、自衛隊が国際法違反の先制攻撃をした、あるいは準備しているとして、逆に戦禍を招き入れるだけであろう。
 国会で審議することなく、政府が独善的に安保政策の転換を図ることは許されない。GDP比2%への軍事費拡大も認められない。 憲法論議もせずにわが国の平和主義をうち捨て、憲法破壊をすることも許されない。  我々は、安保法制を廃止し、立憲民主主義を守ることを求める。また、平和を守るためには、対立する一方との軍事同盟や 集団的自衛権に頼り軍備増強をするのではなく、国連憲章の平和維持の考えを実効的なものとするよう、平和憲法の立場から 広範な国と連帯していくことであると考える。
2022年12月12日 日本科学者会議山口支部幹事会 (12月16日の閣議決定を踏まえ一部加筆修正)

原発の運転期限延長、新増設(リプレース)に反対、上関海面埋立免許更新に抗議する

 2011年3月11日の巨大地震・津波は福島第1原発の非常用電源と外部電源を喪失させ、5重の安全装置の神話はもろくも崩れ、 原子炉は次々とメルトダウンを起こし、重大な放射能汚染をもたらし、現在も事故と汚染との格闘は続いている。 これを機に、わが国の原発の運転期間は原則40年となり、再稼働には厳しい条件が課せられた。わが国の原発57基のうち、 福島第一を含め、すでに24基が廃炉とされ、トラブルや差し止め訴訟もあって、現に稼働しているのは7基である。 うち1基が例外的に認められた20年間の運転延長期間に入っている。この間、原発の新増設や60年を超える運転は 安倍-菅内閣でも口にされなかったが、こともあろうに岸田内閣で原発回帰が言われはじめ、具体的な検討に入った。 これを見越したかのように中国電力は上関原発建設計画の推進のため、海水面埋め立て免許の更新を申請し、 山口県もこれを11月28日に許可したことは極めて遺憾である。
 電力会社は建替(リプレース)と称しているが、廃炉となった原発を更地にするには40年~50年以上を要するので、 廃炉の場所での建替ではなく別の場所に新増設となる。わが国では3.11大震災以前から建設中の2基(うち1基は島根3号原発) 以外で建設準備中は上関原発だけである。これを廃炉とした島根1号原発のリプレースとして建設を推進する意図が見えている。
 最近、経済産業省サイドからは、革新的新型炉の建設で安全性が高まるという宣伝が発せられている。しかし、 アメリカで建設の小型炉は経済的に成り立たず、軽水炉以外の実用化はほど遠い。核融合炉はもとより高速増殖炉も 頓挫したままである。軽水炉であるが半地下にするとか、冷却水を失っても対応できるとかが「革新的」というのは 羊頭狗肉の類いとしか言い様がない。
 どんなに「革新的」であっても、中性子による炉の経年脆弱、使用済み核燃料の処理(海外で抽出されてわが国に 返還されるプルトニウムを含む)、高レベル放射性廃棄物の処分、温排水や放射化した冷却水問題、 さらにはテロや戦争の標的、などとこれまで指摘されている問題は本質的に残るのであり、 原発に依存することは後の世代にリスクを負わせるだけである。
 再生可能エネルギーの開発をおざなりとした原発稼働年限の延長や新増設には断固反対するものである。
2022年12月12日 日本科学者会議山口支部幹事会


  コメント  2022/12/18 吉村高男

 原子力・エネルギー政策については、次の2点を基盤にして、より本質的な立場から議論を展開する必要があると以前から考えています。
1 地球は太陽系第3惑星で、環境有限系であること!
 地球の軌道上では、太陽エネルギー密度が適度に濃く、再生可能エネルギーを効果的に使うことにより、環境に配慮した人類の生存が可能となるはずです。
 そこでは、環境破壊等につながる原子力や化石燃料等の使用は不要で、まさに、Soft Energy Pathの精神が有効となると考えます。 JSAにおいても、そのようなエネルギー・システムで持続的に生活ができることを具体的な試算で示していく必要があると考えています。
2 宇宙でこそ、原子力の平和利用を!  ~ Atoms for Peace in Space! ~
 アイゼンハワー大統領の演説「Atoms for Peace」は、地球上(on the Earth)における原子力の平和利用であり、このことは、 地球上に住む人類には基本的に相容れない議論です。宇宙的な視点から見た、地球軌道上におけるエネルギー資源は、 あくまでも再生可能な太陽エネルギーが基本となるべきと考えています。化石燃料が存在せず、太陽エネルギーが薄くなるような 「深宇宙」(Deep Space)に人類が将来、進出した際に原子力エネルギーを活用することが本質的になるはずです。 地球軌道上における現在のような原子力の使用は、誠にもったいないと考えます。


YU学び舎第28,29講が開かれる

 第28講は、「安倍元首相の国葬・県民葬の何が問題か」をテーマに10月9日にハイブリッドで開催されました。 坂本史子さん(安倍元首相の国葬・県民葬に異議あり!やまぐち県民の会)が「県民葬、やるべきでないこれだけの理由」 と題して県民葬をめぐる経緯と問題点を指摘しました。続いて松原幸恵会員が「憲法から見た国葬の問題点」と題して、 個人の尊重・平等原則、思想良心の自由、表現の自由、財政民主主義に関する憲法の各条文を解説しながら、問題点を指摘しました。

 第29講は、「カルト宗教からの脱出~旧統一協会元信者からのメッセージ~」をテーマに12月4日にオンラインで開催され、 30年前に山口大学経済学部学生だった花田憲彦さん(現在は立川市の教会の牧師)が当時の山口大学の原理研究会の実態と旧統一協会の カルトからの脱出について、経験談をもとに講演し、聴衆にインプレスを与えました。講演の概要は支部の ホームページに引用されていますが、以下、概要を紹介します。

 大学2年の冬の夜、下宿を訪れてきた先輩のアンケートに協力したのが発端で、その後、大学近くのアジトに誘い出され、 褒めちぎる「ラブ・シャワー」に晒された。癒やしの場と感ずるままに、数ヶ月後の1週間の最後に統一原理だと明かされたが、 マインドコントロール下ではもはや拒むことが出来ずに、私物を全て協会に捧げて入信し、極貧の共同生活に入った。
 早朝の祈祷に始まり深夜まで修行や訪問販売があり、大学の講義室は睡眠時間を補う場となった。 キャンパス新聞の編集を担当し、夏休みには同窓会名簿をもとに電話し、集めた広告代を上納していた。 過激派のチラシを渡すために公安と会ったこともあった。自民党代議士の選挙応援で先輩の多くは留年を余儀なくされていた。
 自分の場合は、もともと環境問題に関心を持っていて人類の将来を救う理念を求めていたところに統一協会が入り込んできた。 カルトの特徴は、脅しと恐怖心をあおり立て、信仰と奉仕を求められ、目的のためにはウソも許される、犠牲もいとわないと 思い込まされる。話を丁寧に聞いてくれるカルト相談の窓口に辿り着けないと自力では脱会できない。 親が反原理研の牧師に合わせてくれたことがきっかけで1年がかりで脱会でき、その後、神学校に進んで牧師になった。
 世界平和統一家庭連合が宗教法人格を剥奪されても、オーム真理教と同様に信者は残り、彼等の心のケアが課題となる。

 このYU学び舎は学生への啓発のため大学内の会場で計画されましたが、不当なことに大学当局から許可がおりませんでした。 しかし山口市内の会場に40人、オンラインで12人参加し、また、何年ぶりで学生の参加があって、時機にあった企画は大きな成功をおさめました。


2022年度JSA山口支部定期大会の報告

 大会は10月13日に発行の支部ニュース「つうしん」特別号に掲載された支部定期大会議案について、10月30日にオンラインで開催され、 8名の参加者と委任状(書面決議を含む)14名の合計22名で、会員の過半数を超えており大会は成立しました。 1時間20分の審議で、議案に沿って21年度活動報告、21年度決算報告、22年度予算案、22年度活動方針案、次期幹事会役員案、 その他が審議され、いずれも参加者全員の賛成で可決成立しました。


支部活動日誌

9月15日 支部ニュース「つうしん」No.198発行
10月9日 YU学び舎第28講「安倍元首相の国葬・県民葬の何が問題か」25名参加(支部会員は3名)
10月11,12日 リモートで支部幹事会 定期大会について協議
10月13日 支部ニュース「つうしん」特別号(支部定期大会議案書) 発行
10月30日 支部定期大会
12月4日 YU学び舎第29講「カルト宗教からの脱出~旧統一教会(山口大学原理研究会)元信者からのメッセージ~」 52名参加(支部会員は5名)
12月12日 支部幹事会
(予告) 2月12日 YU学び舎第30講「有機フッ素化合物(PFAS)とは何?横田基地周辺の多摩の地下水汚染」話題提供者 根木山幸夫さん(多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会)


事務局からのお知らせ

 2023年度の年会費のお願い:12月に配送の「日本の科学者1月号」に同封している案内に従って、事前納付をお願いしています。

  

編集後記
 やはりコロナの第8波がきました。いずれ全員が感染するのかも知れません。症状が軽いことを祈るのみか。
JSA山口支部事務局
   〒753-8511 山口市吉田1677-1 山口大学教職員組合気付
  Tel 083-933-5034  Fax 083-921-0287  e-mail fuy-union(at)ma4.seikyou.ne.jp

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