日本科学者会議山口支部ニュース 第204号(通算)(2024年5月16日)
つ う し ん
WEB版 2024-5-12

 

原発をつくらせない山口県民の会総会・学習会に参加して
 例年より1ヶ月以上早く、原発をつくらせない山口県民の会の第28回総会が4月6日(土)の午後、小郡ふれあいセンターで開催された。総会に引き続いて学習会が催され、50名以上の市民が参加していた。
 今回の総会では、1年間の運動の総括と次年度の方針が議論されたが、話題の中心は中国電力+関西電力による、上関町での使用済み核燃料の中間貯蔵施設計画であり、上関原発計画に反対すると同時に貯蔵施設反対の方針が確認された。

 総会の冒頭、会の世話人筆頭の増山氏の挨拶を引用しておく。
 この1年間を手短に振り返ると、原発回帰を突っ走る岸田政権下、23年6月には脱炭素社会を名目とした原発の60年超運転を可能とするGX法が成立した。そして8月にはF1で溜まったアルプス処理水の海洋放出が開始された。
 上関原発に関しては、中国電力の公有水面埋め立ての竣工期間伸長に関する県知事の許可や海上ボーリング調査に対する抗議活動が続く中、中国電力は抗議活動に対する訴訟を起こしている。埋め立てやボーリング調査は実質的に止まったままであるが中国電力は上関原発計画を堅持している。
 こうした中で23年8月、突如として「使用済核燃料中間貯蔵施設」を上関町に、中国電力が関西電力と協力して建設するという計画が報じられた。
 この計画は我が国の核燃料サイクルの破綻の始まりを示唆している。青森県六ケ所村の核燃料再処理工場は稼働開始がいまだ見通せない。2014年から3.11以降の原発再稼働が始まるにあたり、政府は2015年にアクション・プランを示し、各電力会社に使用済核燃料の保管に向いけ追加設置が始まった。使用済核燃料の福井県外搬出を約束している関西電力は県外に中間貯蔵施設を目指すとしたものの、具体化できず、原発内の貯蔵量は飽和に近づき、再稼働した原発を停止せざるを得ない事態が予想された。上関町では2019年から内々に検討をし、現町長になってからは具体的に補助金の金づるとして中間貯蔵施設求めていたが、いよいよその動きが顕在化することとなった。
 ところで、電力各社は類似の施設を「乾式貯蔵施設」と称しており、関西電力も県外に中間貯蔵施設ができるまでは原発敷地内に乾式貯蔵施設をつくることで福井県の了解を得たという。もし、5年~10年で再処理工場が稼働するのならば、数百トンの乾式貯蔵施設で間にあうだろう。にもかかわらず、数千トンの貯蔵施設を必要とするのはなぜか?答は一つ、再処理工場稼働はあてにならない、したがって、核燃料サイクル構想は破綻に瀕していることを意味している。
 その中で原発を稼働させるには大規模な使用済核燃料貯蔵施設が必要である。一旦できれば数百年あるいはそれ以上の貯蔵の覚悟が必要ということになるだろう。「中間」というニュアンスの数十年の期間はまやかしに過ぎないといってもよかろう。国と電気事業連合会は核燃料サイクルの破綻を認め、将来にわたって国民に責任のある方策を提示し、民主的な議論を開始すべきときである。


 総会に引き続いて開催された学習会の演題は「原子力は人類の手に負えるのか」で、関心のある市民50名以上が聴講した。講師の森重晴雄氏は山口県の出身で、大学で原子核工学と土木工学を修めた後、三菱重工に就職し、原発基礎の耐震研究や伊方原発の炉心据え付けなどに関わった専門技術者である。現在は神戸で再生エネルギーの研究のかたわら、福島第一の破壊された圧力容器下部の公開データを解析し、警鐘を鳴らす活動を行っている。
 講演内容は氏の近著「差し迫る、福島原発1号機の倒壊と日本滅亡」(せせらぎ出版)に詳細に記述されている。炉心が融解し、デブリが圧力容器を貫通して原子炉本体を支える機能を喪失している福島第1の1号炉が特に危険であり、目処が立たないデブリ取り出しに関わるよりも緊急な補強工事を行わないと、震度6強の地震で倒壊して核燃料プールを破壊して、取り返しのつかないことになる。東電も経産省も技術の基本が分かっておらず、とうてい原発を扱う能力も資格もないと断罪された。
 講演では福島原発事故でのベントの失敗と水素爆発に関する興味深い解説もあった。

支部活動日誌
3月23日 上関原発を建てさせない山口大集会(維新公園、800人参加)
4月6日 原発をつくらせない山口県民の会総会・学習会(小郡ふれあいセンター 50人参加)
5月3日 憲法を守る山口集会(山口市民会館小ホール、120人参加)

編集後記
 4月23日、中国電力は上関町で中間貯蔵施設予定地のボーリング調査を開始した。5月10日、原発立地佐賀県玄海町長は「核のゴミ」最終処分場の文献調査受け入れを表明した。玄海町は適地マップでは好ましくないとされているのに、経産省が申し入れたという。なりふり構わる原発推進の政府の姿勢があからさまである。
 支部としての活動だけでなく、会員個人の科学者としての取り組みも紹介したいので、記事の投稿をお願いします。また、https://jsayama.seesaa.net/ のような会員個人のプログ・SNSなどもありましたら、紹介したいので情報提供をお願いします。
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