日本科学者会議山口支部ニュース 第206号(通算)(2025年2月20日) |
つ う し ん |
WEB版 2025-2-25 |
使用済核燃料「中間貯蔵施設」の上関町への建設に反対することを求める県議会への請願の結果について |
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2024年11~12月に開催の山口県議会に、山口支部が加盟している「原発をつくらせない山口県民の会」の請願書が提出されました。産業観光委員会に付託後、12月13日の本会議で不採択となりました。 請願文は https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/site/gikai/282660.htmlに、請願に対する各会派の賛否はhttps://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/198288.pdfに掲載されています。 |
使用済核燃料貯蔵施設およびキャスクについて |
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2023年8月に表に出た中国電力による上関町での使用済核燃料中間貯蔵施設の計画については、支部ニュース 「つうしん 第202号」で解説している。そして同年12月の支部定期大会では 「上関町に予定されている核燃料中間貯蔵施設の建設に反対する」をあげている。 |
1年間の経緯 |
まず、その後の経緯を簡単に振り返る;
乾式で使用済核燃料を保存するするキャスクは東電福島原発や原電東海第2発電所などの原発敷地内での中間貯蔵施設、
および青森県に東電と原電が建設したリサイクル燃料備蓄センターに設置の実績がある。
このようなキャスクおよび中間貯蔵施設の「安全性」を考えるうえで、ネットで検索できる文献としては、
次のものが重要であろう。 |
![]()
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文献2)の東電のキャスク保管設備について |
はじめに、2)の東電の296ページにおよぶpdf資料(ファイル名からは2012年7月)から、気になったことを紹介しよう。
・2種類の燃料被覆管の設計基準温度は200℃もしくは300℃
原子炉運転中は臨界状態が保持されるように中性子量はコントロールされている。使用済核燃料を冷却プールで
10年以上にわたり冷却後に空冷式のキャスクに密閉するのであるが、核燃料棒はキャスクの中でバスケット仕切り板
(中性子を吸収するボロン10Bを添加したアルミニウム)で仕切り、かつ容器本体の内装として中性子遮へい材を巻いて、
長年にわたり臨界(核分裂の連鎖反応)を防止しなければならないということが分かる。
万一、キャスク内で臨界に達すればキャスクは破壊され、深刻な放射能汚染を引き起こすからである。
バスケットが振動や取り付け不具合で離脱することは許されないことだいえる。 |
文献1のリサイクル燃料貯蔵センターについて |
つぎに、東京電力と日本原子力発電の共同出資で青森県むつ市に設立されたリサイクル燃料貯蔵センターは
両者の使用済核燃料の中間貯蔵施設として2024年秋からキャスクの搬入が始まっている。
資料1)のページに、地元との安全協定、トラブル事例集、防災業務計画、損害賠償実施方針、廃止措置実施方針について、
9編のpdfが載っている。これらを詳細にみれば、逆にどのようなリスクが想定されているかがわかるという代物である。
以下、「安全確保の取り組み」から、トラブル事例について紹介しよう。 |
疑問・疑念:まとめにかえて |
2つの資料に目を通して、再確認したこと ・臨界防止機能が設計通り働かないといけないこと ・キャスクの蓋の金属ガスケットは緩んだり、腐食してはいけないこと ・合理性への疑念: |
<ミニ知識> |
電気事業連のデータベース https://www.fepc.or.jp/pr/data/infobase/ および上述の文献2)によると、
燃料棒を交換する2~3年間で燃料棒中の組成は図のようになっている。![]() 核燃料は2~3年間原子炉で燃やした後、10~15年以上、使用済燃料プール内で寿命の短い核種の壊変熱を冷まして、 空冷に耐えられるほどになってから、キャスクに詰めて貯蔵施設に移す。 原発にはこの冷却プールと貯蔵施設は必ず付設している。核燃料サイクルを掲げるわが国では再処理をする というのが建前であるので、キャスクに詰めても廃棄出来ない。再処理工場稼働のめどがたたない中、 置き場が満杯に近づいており、貯蔵施設の増設や、原発敷地外にも中間貯蔵施設を建設しようとしている。 キャスク内で臨界に達したら、急激な温度上昇と圧力増加でキャスクが破壊もしくは蓋の気密が破れ、 放射性物質による原子力災害が起こる。臨界に達しないまでも核分裂が進行したら半減期が9時間と短い キセノン135が検出されるであろう。キャスクの内部の放射性ガスセンサーはついていないので、 一次蓋のガスケットの気密性が破れて、初めて気づくことになろう。 ともあれ、キャスクは放熱が設計通りにいくことと、バスケットが中性子を十分に吸収し、自発核分裂や 再臨界に至らないことが肝要である。そういうことは想定外といわれるが、想定外でも起こらないことが 起こったのが福島第1の事故だということを忘れるわけにはいかない。 |
「ゆきとどいた教育を求める」請願行動に参加して |
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増山博行 |
昨年(2024)の11月山口県議会会期中の12月2日、「子どもたちにゆきとどいた教育を求める
(小・中学校、高校の少人数学級実現、私学助成の増額、教育費の父母負担軽減、障害児教育の充実)請願書」を
県議会に提出する集会が議会請願陳情室において行われた。今回の具体的な請願事項は次の10項目であった。 ![]() コロナでの学校閉鎖などを契機とする増加があるかもしれないが、それにしても急激な増加傾向である。 実は私は2年前から某学園の高校で理科の講師を行っている。現場を見るにつけても、多人数学級では生徒に先生の目が 行き届いていない様子を見ている。15年後には8がけ社会の到来と予測されている我が国のありようが問われているが、 その時に社会を担ってたつ若い世代がこのような状況では困ると思わざるを得ない。 教員の増員や予算増だけでは解決しない問題かもしれないが、それにしても教育公財政支出対GDP比が3%と、 OECD平均値4.3%との差が7兆円であるという状況は一日も早く改善されるべきである。 子どもたちにゆきとどいた教育を求める運動の輪が広がることを願ってやまない。 |
JSA中国地区会議の報告 |
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2025年2月6日、表記会議はwebシステムの遠隔で施された。代理を含む各支部幹事と全国事務局財政担当者が
この会議に参加した。最初に、昨年10月に開催された中国地区シンポジウムの総括が報告された後、次回(2026年)は
ローテーションに従い広島支部がシンポジウムを担当することとした。その後、全国事務局の運動としての学術会議の
法人化に反対する取り組みと、定期大会の日程(5/28, 6/8)が紹介され、次いで、中国地区各支部の活動状況等の報告が
あった。また、以下に述べる「日本の科学者」のPDFへの移行について、意見を交換した。 支部事務局長
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(資料) 2024年を振り返って(科学・環境関連ニュース) |
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1/1 能登半島震度7の地震発生(少し前までは地下から水が上昇する群発地震といわれていた) |
(つうしんNo.205の日誌の再録に一部加筆) ・02月26日:原発を作らせない会「使用済み核燃料の上関町誘致に反対することを求める決議」に賛同・03月05日:つうしん203号 ・03月23日:上関原発を建てさせない山口大集会(維新公園、800人参加) ・04月06日:原発をつくらせない山口県民の会総会・学習会(小郡ふれあいセンター 50人参加) ・05月03日:憲法を守る山口集会(山口市民会館小ホール、市民120人参加) ・05月21日:つうしん204号 ・05月25日:JSA定期大会参加(松原会員) ・06月08日:JSA定期大会報告(松原会員) ・06月09日:JSA定期大会参加・報告(大和田会員) ・07月10日:原水禁平和行進案内 ・12月02日:ゆきとどいた教育をすすめる会の県議会請願行動(増山会員) ・12月02日:上関町への使用済核燃料施設建設反対する県議会請願書提出(つくらせない会) ・12月15日:支部大会開催 ・01月15日:つうしん205号 ・02月06日:中国地区会議 ・02月11日:第59回思想と信教の自由を守る山口県民集会(主催は実行委員会) |
事務連絡 1月下旬に発送された「つうしんNo.205」に会費請求書と郵便振込用紙が同封されています。2025年度会費の事前納入にご協力ください。 |
<参考資料> 2月18日に閣議決定された「エネルギー基本計画」の概要を説明する資源エネルギー庁の
pdfから抜粋![]() |
編集後記
編集人の個人的事情で、前号は支部事務局長に編集をお願いしての半年遅れの発行となったことを
お詫びします。これからしばらくは従来通りの年4回の発行に努める所存です。ついては会員諸兄の投稿、情報提供、
近況報告などなんでも気軽にお願いします。
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