| 日本科学者会議山口支部ニュース 第207号(通算)(2025年9月16日) |
| つ う し ん |
| WEB版 2026-1-16 |
| 公開無料講演会ご案内 10月21日 学術や研究とは何だろうか? ~私の経験から~ |
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| 講演者 梶田隆章(東京大学卓越教授・特別栄誉教授;2015 年ノーベル物理学賞受賞、前日本学術会議会長) |
| 期日・会場 2025年10月21日 17:30~19:00・山口大学会館(自由参加、予約不要、ZOOM視聴あり) |
| 主催者 山口大学時間学研究所; 詳細は研究所ホームページ |
| 学術全般、そして学術会議に対する最近の政府のやり方には極めて遺憾なものがあります。
とりわけ残念なのは、当事者である学者あるいは学生がそのことに対して極めて消極的であるように見えることです。
学術会議法は国会で何の修正もなく成立してしまい、本当にこんなことでよいのか、
学者の矜持はどこにいったのかと憂慮の志が講演会を企画しています。 JSA山口支部会員およびその周りの方々に広く案内します。(事務局) |
| 本田由紀氏講演「国立大学の財政問題―学費値上げと高等教育を受ける権利―」 |
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| 6月21日土曜日の午後、山口大学で第35回全大教中国四国地区教職員研究集会が開催されました。この集会では、 東京大学大学院本田由紀教授を招いての記念講演「国立大学の財政問題―学費値上げと高等教育を受ける権利―(キャッチコピー:若者の夢を奪う学費値上げ)」が行われました。 JSA山口支部の大学分会の会員のレポートを掲載します。 |
| 寄稿1 本田由紀氏講演を聞いて |
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6月21日土曜日の午後、山口大学で開催された第35回全大教中国四国地区教職員研究集会にて、東京大学大学院本田由紀教授を招いての記念講演「国立大学の財政問題―学費値上げと高等教育を受ける権利―(キャッチコピー:若者の夢を奪う学費値上げ)」を行った。
当日は会場で50名近く、さらにオンラインでの視聴者が120名以上、計170名が参加するという大変な盛会となった。
講師の知名度の高さもさることながら、論題がいかに今日的で多くの大学人・市民の関心を惹くものであるかを物語っていよう。筆者も期待をもって臨んだところである。 はたして、大学教育のおかれている現状につい、多くのデータ(スライド24枚)に基づき、国際比較や社会背景のなかで考察するという、教育社会学の手法に貫かれた講演は、期待を大きく上回る迫力に満ちたものであった。 このため、会員のみなさんにもぜひお伝えしたい内容なので、拙いものとはなるが、紙面をお借りして講演の内容を紹介させていただこうと思う。 2004年4月の国立大学法人化を経た国立大学に勤めるものとして、運営交付金が毎年一方的に削減され続けてきたもとで、教育、研究がますます困難になっていることは日々痛感しているところである。そうした事態に立ち至った事情について、国立大学単体の問題としてではなく、歴史的な背景をふまえ社会との関係のなかで説明したものであった。 そもそも日本の高等教育において、学士教育を量的な面で私立大学が多く担っていることはだれしもが感じるところであろう。そこで見ておくべきは、そのことが政府の施策によるもので、高等教育機関への志願者増大の受け入れの相当部分を私立大学に押し付ける形で進めてきた結果に他ならないことだという。当然、政府の私立大学への援助は乏しいまま推移し、私立大学の側でも消費者物価指数を上回るかたちで学費値上げがなされてきた。といっても安定成長からバルブ期にかけてまでは、学生、保護者の側も学費値上げに何とか耐えてきた。しかし90年代以降、高卒労働市場が悪化するなか、必ずしも富裕ではない階層から、将来の就職のためだとして学費の高い私立大学への進学が拡大することになる。 ところが政府は私立大学への財政的支援を拡充するのではなく、逆に公平性の担保というロジックを言い募り、私立大学に合わせて国立大学の学費を引き上げてきた。とはいえ法人化後は学費を値上げしないよう踏みとどまってきたが、昨今はそれが厳しくなり、東京大学のように、授業料値上げに踏み切る大学も現われている。いまや日本の国立大学授業料は、OECD加盟25ケ国中5番目に高額であり、にもかかわらず学生支援が整備されていないという、国際的にみても特異な位置を占めているのである。 また日本の大学は、全国にわたりピラミッド型の序列をなしているのが特徴である。そして威信のある大学に富裕層が群がることで、大学が社会の不平等を前提にするとともに、それを再生産する場にもなっている。そのさい問題は、受益者負担という政府のメッセージを、人々が内面化してしまっていることにあるという。自己責任とするのではなく、大学に通う費用は政府が保証すべきだとする意識を、私たちはあらためてもたねばならない。 また私立大学に学部教育を依存することと裏腹に大学院は国立が多く、それだけ研究の再生産という役割を果たしてきている。しかし、朝日新聞が2024年に国立大学学長に行ったアンケートによっても、法人化によって政府からの圧力はかえって強まったし、産業界の意向の影響も強くなっている。しかも研究費は低下しているなど、悲鳴を上げている状態をみてとれる。こうしたなか「選択と集中」で特定の大学、分野の研究だけが重視され、かつて国立大学が担ってきた多様な分野での幅広い裾野は大きく損なわれている。研究に充てる時間も人も資金も削減されるなかで、中国と入れ替わるように研究力は急速に低下しているのも頷ける。一体、何がしたいのか、といわざるをえないのがこの間の政府の科学技術、高等教育政施策だとも指摘していた。 そしてこうして大学の置かれている状況を、社会とのかかわりでみれば次のように説明できるという。 まず1960~80年代、教育においては、大企業に入るためという論理が支配し、仕事の世界では社畜、性別役割分業といったことが刻み込まれていた。総じて経済成長をエンジンに、教育―仕事―家族と順に資源が流し込まれる構造ができあがっていた。そこでは、学ぶことや働くことの意味、人を愛し暮らす意味は空洞化したまま放置されていた。 ところが90年代になって経済構造が変化すると、就職氷河期のなか家族形成も困難となってゆき、孤独や貧困の顕在化する事態が引き起こされる。にもかかわらず政府がセーフティーネット拡充しないままであるため、教育システムも含めて苦しい人が生み出される悪循環のモデルとなっている。 したがって、いまやこのモデルを組み替えるしかない。まずは政府が怠り抑制してきた教育、家族に対する資源投入が必要なはずである。そのさい、大都市圏では古い循環が厳として残っているなか、切り捨ての対象とみなされている地方において、日本社会の課題が厳しいものになっている。だからこそ、循環モデルの組み換えは地方において可能なはずだ、との訴えには、はたと膝を叩く思いであった。 困難な状況に置かれた人たちに対する暖かいシンパシーと、政府の施策に対する強い怒りに満ちた報告を聞くにつれ、私たち科学研究に携わるものもそれぞれの分野で奮闘しなければならないと思わされた。参加者からの質問に答えて本田氏は、あるノーベル賞学者や人文学の著名な研究者によってなされる、「社会の役に立つなどと考える必要はない」、「純粋な学問それ自体の発展に尽くしているのだ」、といった高踏的な言説には強い憤りを感じる、と述べていた。いまこの社会にこれだけ苦しい思いをしているたちがいることにこそ思いを馳せるべきであり、単なる金儲けに繋がる以外のかたちで、いかに人々の生活を支え、豊かにするのかを考えることが、ひいてはサスティナブルな社会を作り出すうえでのオルタナティブにもなるはずだというのである。科学者は社会との有機的なつながりのなかに身を置かねばならいと、強く感じさせられた講演だった。( 森下 徹;山口大学教育学部、教職員組合) |
| 寄稿2: 日本の大学における財政問題と公財政支出 |
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2025年6月21日、第35回全大教中国四国地区教職員研究集会のオンライン講演会が開催された。講師は本田由紀氏(東京大学、教育社会学)で、講演題目は「国立大学の財政問題−高等教育を受ける権利と学費値上げ問題」だった。以下、概要を紹介する。 日本では高等教育(大学)への公財政支出が極めて少なく、私費負担が多すぎる。それは国際的に見ても突出しており、2022年のOECD報告によれば、日本の高等教育段階における私費負担の割合は、OECD平均の31%を大きく上回る67%に達している。このような日本の費用負担構造の要因として、特に学部教育において、高学費の私立大学が圧倒的多数を占めていることが挙げられる。そして、私立大学の授業料が高額なのは、私立大学への公的補助の割合が少ないためである。 一方、国立大学においても、2004年の法人化以来、公的な運営費交付金額が年々削減され、授業料も私立大学に合わせるように値上げを続けてきている。その額は国際的にも非常に高いものとなっている(2022年のOECD報告によれば、主要25カ国中5番目に高い水準)が、学生に対する経済的支援は薄く、国立大学(法人)は家計の厳しい学生の受け皿にはなっていないのが現状である。 私立・国立の大学双方に対するこうした公財政支出の少なさは、大学の機会保障や教育研究水準の一層の低下を招いており、政府の責任は大きい。このような状況の背景には、高度経済成長期から安定成長期(1960年代から80年代)にかけて形成されてきた特殊日本的な循環モデルに政府も依存し、高等教育における「受益者負担」を喧伝してきたことが指摘される。しかし、このモデルを支えるエンジンは経済成長であり、現在の日本ではこのモデルは既に破綻しており、新たな社会モデルが求められる。今後、大学の教育機会格差を是正し、教育研究水準を上げていくためには、高等教育への公費支出の拡大と私費負担の軽減が必要であるが、現時点での政府の支援策は複雑かつ限定的でとても実効性があるとは言い難い。 以上が講演の概要であるが、その後の質疑応答で、求められる大学像についての質問に対する回答の中で、学問の本質に関わる点についても言及があったので付言しておきたい。それは「学問が役に立つ」とはどういうことかについてである。「役に立つ」というと、コスパ、タイパ、金儲けと言った短期的でわかりやすい成果が求められる傾向にあるが、学問の本質は「すぐに金にならなくても長い眼で見て豊かな社会や生活に役立つこと」にあるとの指摘が印象的だった。その意味でも、本当に必要な公財政支出は何かを社会全体で考えていく必要性を感じた。(松原幸恵;山口大学教育学部) |
| 第56回 JSA定期大会の報告 |
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2025年5月24日と6月8日にオンラインで開催の日本科学者会議第56回定期大会には大和田事務局長が支部選出代議員として参加しました。
大会の公式の報告書は「日本の科学者」に添付で配布済みですが、代議員と事務局とのやり取りの部分で参考になりそうな箇所を報告します。(事務局長) Q: 支部で会誌の配布や会費等の管理が難しくなった場合どうすれば良いか? A: 基本は支部単位であるが、それがダメなら地区で、それも難しいようであれば、全国で管理することも検討する予定である。また、会誌については電子版も踏まえていくつか検討している段階である。 Q: 会費値上げはしないで、事務局業務の整理等、諸経費削減を目指すことが重要ではないか。値上げの前に寄付を集めることはできないか。 A: 2021年度以降は大幅な赤字が続いている。会員数が現状では、会費値上げに理解を求めたが、一年かけて議論したい。 Q: JSAホームページの更新について A: IDはjsa でPWは〇〇〇(非公開)となっている(山口支部事務局に問合わせ願います) |
| 支部活動日誌 |
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・03月22日:2025上関原発を建てさせない山口大集会(山口維新公園、個人参加) ・05月24日、06月08日:JSA全国定期大会(代議員は事務局長)) ・06月01日:原発をつくらせない山口県民の会 総会と学習会(山口県総合保健会館、組織参加)) 学習会「核燃料中間貯蔵施設とはいかなるものか」講師 増山) ・06月21日:教職員研究集会記念講演「国立大学の財政問題」講師 本田東大教授(山口大学会館、会員参加)) ・07月上旬:学術会議法案反対情宣) ・07月下旬:2024原水爆禁止国民平和大行進) ・08月31日:上関原発を建てさせない山口大集会実行委員会と学習会(カリエンテ山口、個人参加)) 学習会「使用済核燃料を貯蔵するキャスクとは」講師 増山) |
| 参考資料 海底活断層 |
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| 大分県の防災会議で6月に議論されたとテレビ大分で報じられた、国東半島から上関町長島の南をかすめ、周防大島に達する(安芸灘にも伸びている)海底活断層。全体が動けばマグニチュードは7以上。 |
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編集後記
2025年8月29日、中国電力は計画の上関原発用地内に使用済核燃料中間貯蔵施設をおくことは「技術的に対応できない問題はない」と上関町に報告すると同時に、立地調査結果を公表した。
ボーリング調査を行った地点の近くに活断層が確認されなかったことや、施設の基礎地盤となる堅硬な岩盤があることなどを根拠としている。
しかし、5㎞南には国東半島から周防大島にかけて60㎞に達する海底活断層が存在し、最近の知見ではマグニチュード7以上と想定されている。
施設の立地する場所は山の傾斜を切り崩し・埋め立てて用地を造成すると見受けられる。
このような場合、下部岩盤が堅硬でも風化された表層岩盤であること、地下には活断層ではないとする断層の破砕層が存在することを考えると、
南海トラフの大地震や海底活断層の地震の評価は厳格に求められねばならない。
ちなみに総延長60㎞におよぶ活断層の存在は2009年に中国電力が上関原発立地に向けて保安院に提出した報告書の中では
30~40㎞程度の2つの断層に切断されて記載され、それぞれはマグニチュード6.7と6.8とされていた。
今回の中電の立地調査報告書ではこれをそのまま引用し、文献調査の結果として問題ないとしているのは欺瞞としか言いようがない。
地質学の専門家にはぜひ取り上げていただきたい。
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