共同声明
2014/7/2

集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定に抗議する

 2014年7月1日は、国民主権と平和主義を掲げる日本国憲法にとって重大な汚点を残す日 となりました。同日、安倍内閣が、個別的自衛権の行使に限定してきた従来の憲法解釈を大 転換し、集団的自衛権の行使容認に踏み切る閣議決定をしたからです。
 憲法9 条に関する政府解釈において、これまでは、自衛権の発動としての武力行使には、 @我が国に対する急迫不正の侵害があること、Aこの場合にこれを排除するために他に適当 な手段がないこと、B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、の三要件を課していま した。しかし今回、@我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な 関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生 命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、Aこれを排除し、 我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない時に、B必要最小限度の実 力を行使すること、という新三要件に変更しました。自国の防衛に専念することと、海外で 他国に対して武力攻撃を行うこととの間には大きな開きがあります。首相は、これについて、 これまでの三要件と「ほとんど変わっていない」と言い切りましたが、本気でそう思ってい るなら首相たる者の感覚の鈍さに国民として不安感を禁じ得ないし、そうでなければ国民に 対するごまかし以外の何ものでもありません。
 さらに問題なのは、憲法違反にも相当するこれほどの重大な憲法解釈の変更を、国民的議 論を排除して内閣の独断で行ったという点です。憲法96 条は、憲法改正には国会の発議の後、 国民の承認を得る必要があることを規定しますが、今回の閣議決定は、当然必要とする手続 きを経ない一内閣による「解釈改憲」にほかなりません。首相は、記者会見で「今回の閣議 決定で集団的自衛権が行使できるようになるわけではない」と説明しましたが、国会で審議 することもなく、そこに「国民」の存在は感じられません。国家権力に縛りをかけるという 立憲主義の精神をないがしろにするこうした手法がまかり通るなら、時の政権の思惑次第で 憲法解釈がいかようにも変えられることになります。したがって、首相が「日本が再び戦争 をする国になることは断じてあり得ない」と言ったところで、それには何の保証もありませ ん。新三要件が歯止めにならないことは明らかです。このように国会審議も経ず、多くの国 民の声を無視して、単なる「閣議決定」で憲法9条を踏みにじる今回の閣議決定は罪深いも のがあります。
 また、今回の閣議決定に先立ち、国家安全保障局により国会審議を想定した問答集が作ら れていたことが明らかになりました。そこでは、これまで首相が強調してきた「限定容認論」 を踏み越えて、閣議決定には盛り込まれなかった集団安全保障への参加も可能であるとされ ています。このように本音を押し隠し、机上の空論で国民を欺こうとする政権のやり口を決 して許すわけにはいきません。ここに改めて今回の閣議決定に対し、断固たる抗議の意思を 表明します。
               2014年 7月 2日
                            日本科学者会議山口支部

トップにもどる      もどる