大会決議 |
2015/10/31 |
私たちは「科学研究に携わる科学者がその社会的責任を自覚し、科学の各分野を総合的に発展させ、
その成果を平和的に利用するよう社会に働きかける」という日本科学者会議の理念から目下の
政治的・社会的情勢を見据えて次のアピールを行う。
T.「平和安全保障関連法」の廃止を求める
安倍内閣は国会での多数与党の力を背景に、百日近い会期延長、かたどおりの審議、
さらに野党の一部も取り込んで会期末に安保法制を成立させたと称している。しかし、
国会審議を重ねるごとに法制の矛盾は露呈し、憲法違反の法案と立憲主義をないがしろに
したやり方に国民の批判は高まり、内閣支持率は低下を続けた。国 会周辺及び各地での
抗議集会・デモはかってないほどの高揚を見せ、これまで政治に無関心と思われた
若者がNo!の声をあげ始めている
国会で成立した法律は「悪法と言えども法なり」と言うところだけで立憲主義を
かすめ取っているが、憲法第 53 条の規定を無視して、TPP問題での臨時国会開催要求
を無視するという新たな憲法違反の姿勢を示している。昨年の憲法 9 条の「解釈 改憲」
に始まる一連の憲法無視の政治は直ちにやめさせなければならない。民主主 義の根幹で
ある立憲主義を回復し、戦争法である「平和安全保障関連法」は廃止されなければならない。
U.大学や公的研究機関での軍事研究に反対する
政治の軍国化とならんで、科学技術を戦争に動員する企みが進行している。平成 27 年度より
防衛省は「安全保障技術研究推進制度」と言う競争的研究資金配分制度を創設し、
33 の研究テーマを募集した。これには、山口大学を始め大学等から 58 件、公的研究機関から
22 件、企業等から 29 件の応募があり、うち、9 件(1 件あたり 3 千万円)が採択された。
研究成果の公表や民生分野での技術の活用も許されると言うが、設定されたテーマはまさに
防衛省が必要とする軍事に活用できる研究テ ーマであることは明らかである。
先の世界大戦に大学人が研究面でも動員され、学生は学徒出陣をさせられたことを再び繰り
返さないという決意で戦後の新制大学はスタートした。この建学の精神は名古屋大学の平和憲章に
明文化されている。いまここに戦争法の制定を背景に再び科学技術を動員する動きが顕在化して
いることに私たちは警鐘を鳴らさざるを得 ない。軍事研究に手を染めることは非人道的兵器への
批判力をそぐだけでなく、自由な学問研究の発展を阻害することになる。
科学技術は人類全体の平和と幸福のために活用されるべきであり、大学や公的研究機関での
軍事研究には断固反対するものである。