大会決議 |
2016/10/29 |
近年、我が国の大学の評価が諸外国に比して低下の傾向が指摘されている。
その理由には2004年の国立大学法人化以降、国による経常的経費の支援が削減され注1、
研究重点大学のみが優遇されること、その重点大学でも政府・財界の目にそぐわない
領域分野・課題には「投資」されないことが挙げられている。
文科省による国家プロジェクト偏重が進み、予算のつかない領域分野・課題の
研究者が疲弊する事に対しては、本年、生理学・医学ノーベル賞を受賞する
大隅良典氏は競争的資金の一面的な拡充の中、すぐに成果の出る研究のみが
もてはやされる現状を憂い、経常的な教育研究費を拡充することが肝要であると訴えている。
一方、「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は2013年12月に閣議決定した指針「国家安全保障戦略」
に基づき、防衛省は「産学官の力の結集による安全保障分野での有効活用」をめざして2015年度から
「安全保障技術研究推進制度」を創設し、大学等の研究機関や企業に対する競争的資金の供与を始めた。
初年度は9研究課題3億円を採択し、今年度は予算を倍増して新規10課題を追加採択し、来年度は
110億円を概算要求しており、民間および大学の科学技術を戦争遂行能力の向上のために取り込もうとしている。
我が国では20世紀前半のアジア・太平洋戦争の悲惨な結果を反省し、戦後、新生出発した日本学術会議は
1950年と1967年の2度にわたって、日本の科学者・研究者は「軍事研究は行わない」旨の声明を出している。
また核軍拡競争の激化とベトナム戦争の拡大に危機感を持って1965年に結成された日本科学者会議は
「自然と社会の真理を追求し、人類の進歩と人民の生活に科学を役立てることは、
科学研究にたずさわるものの心からの願いである。」と宣言している。
私たちは、大学への軍事研究費の導入は科学の発展を阻害するものと考える。科学の正しい発展の
ためには科学者の良心と責任のうえに、自由な研究が推進できる研究費の拡充こそが有効であることを訴える。