幹事会声明

原発の運転期限延長、新増設(リプレース)に反対、上関海面埋立免許更新に抗議する

 2011年3月11日の巨大地震・津波は福島第1原発の非常用電源と外部電源を喪失させ、5重の安全装置の神話は もろくも崩れ、原子炉は次々とメルトダウンを起こし、重大な放射能汚染をもたらし、現在も事故と汚染との格闘は 続いている。これを機に、わが国の原発の運転期間は原則40年となり、再稼働には厳しい条件が課せられた。 わが国の原発57基のうち、福島第一を含め、すでに24基が廃炉とされ、トラブルや差し止め訴訟もあって、 現に稼働しているのは7基である。うち1基が例外的に認められた20年間の運転延長期間に入っている。この間、 原発の新増設や60年を超える運転は安倍-菅内閣でも口にされなかったが、こともあろうに岸田内閣で原発回帰が 言われはじめ、具体的な検討に入った。これを見越したかのように中国電力は上関原発建設計画の推進のため、 海水面埋め立て免許の更新を申請し、山口県もこれを11月28日に許可したことは極めて遺憾である。
 電力会社は建替(リプレース)と称しているが、廃炉となった原発を更地にするには40年~50年以上を要するので、 廃炉の場所での建替ではなく別の場所に新増設となる。わが国では3.11大震災以前から建設中の2基 (うち1基は島根3号原発)以外で建設準備中は上関原発だけである。これを廃炉とした島根1号原発の リプレースとして建設を推進する意図が見えている。
 最近、経済産業省サイドからは、革新的新型炉の建設で安全性が高まるという宣伝が発せられている。しかし、 アメリカで建設の小型炉は経済的に成り立たず、軽水炉以外の実用化はほど遠い。核融合炉はもとより高速増殖炉も 頓挫したままである。軽水炉であるが半地下にするとか、冷却水を失っても対応できるとかが「革新的」というのは 羊頭狗肉の類いとしか言い様がない。
 どんなに「革新的」であっても、中性子による炉の経年脆弱、使用済み核燃料の処理(海外で抽出されて わが国に返還されるプルトニウムを含む)、高レベル放射性廃棄物の処分、温排水や放射化した冷却水問題、 さらにはテロや戦争の標的、などとこれまで指摘されている問題は本質的に残るのであり、原発に依存することは 後の世代にリスクを負わせるだけである。
 再生可能エネルギーの開発をおざなりとした原発稼働年限の延長や新増設には断固反対するものである。

2022年12月12日
日本科学者会議山口支部幹事会

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