ミニ講座 YU学び舎第4講(2017年4月26日) 概要 |
原発に関わる3つの話題 |
日本列島の成り立ちをプレートの沈み込みの歴史から研究してきた地質学者の君波さんが、最近論争の的となっている3つの話題について解説しました。
1.0.23?Sv/h=1mSv/yは正しいか?
放射能除染が進んだとして、福島第一原発周辺に設定された避難指示区域の見直しがなされ、帰還困難区域以外は順次、帰還してよろしいと政府は言っています。その際、帰還して住んだときの被曝線量の見積もりが甘くはないかという指摘が東北大学の吉田浩子さんから出されています。つまり、0.23μSv/hを単純に1日24時間、365日倍すれば2mSv/yとなるが、屋内にいる時間もあるので建屋のシールドその他のファクターを考えれば、年間1mSv/yにとどまる、これは許容できる線量だというのが政府側の見解です。しかし、吉田さんが実際に現地で除染前、除染後、屋内被曝量などを測定してみると、言われているファクターは甘過ぎるのではないか、という研究結果が論文として公表されていることを詳しく紹介しました。
2.島崎vs.原子力規制委員会論争・・・震源の大きさは過小評価されているか?
活断層の長さもしくは面積と地震モーメント(震源での地震の規模)の一定の関係(入倉・三宅の式)をもとに、原発周辺の活断層の断層面積(長さ)から電力会社は地震モーメントをもとめ、これを使って基準地震動を評価し、原子力規制委員会はそれを追認しています。これに対して、規制委員会の委員長代理を務めていた島崎氏は入倉・三宅の式を用いると地震動の過小評価の虞があると2015年5月に学会で発表しました。この問題は原発再稼働を認めるかどうかをめぐって、論争となっています。
この「一定の関係」は世界各地の主としてプレート沈み込みによる大地震(逆断層による海溝型地震)のデータを基にしていますが、我が国でしばしば甚大な被害をもたらす地殻内地震(いわゆる直下型地震)は,高角な横ずれ断層が多いことが特徴です。そこでこのような地殻内地震に合う武村の式を採用すべきだと島崎氏は主張しています。武村の式は昨年の熊本大地震の場合にも適合しており、入倉・三宅の式を用いた関西電力の地震モーメントの評価と4倍程度の開きがあります。安全側で評価するという観点からも、原子力規制委員会の見解は過小評価ではないかと、両者の論争を解説しました。
3.伊方原発周辺の中央構造線の位置に関する新見解・・・中央構造線本体は伊方原発の600m北側にあるのか!?
原子力規制委員会は、中央構造線が伊方原発の約10km沖合にあるとする四国電力の見解を追認して原発の再稼働を認めました。しかし、最近の早坂・小松氏の研究で、わずか600m北側に中央構造線がある可能性が指摘され、学会で大きな話題となっています。この位置に中央構造線が通るとすると,基準地震動の見積もりもより大きな値に変更する必要が生じます.四国電力は,極めて硬い岩盤上に伊方原発を建設したとしているが,早坂・小松は中央構造線のダメージゾーン上立地していることを明らかにしています。これらに関して専門的立場から解説がありました。