ミニ講座 YU学び舎第9講(2018年3月31日) 概要
労働者(働く人びと)の人権・基本権としての健康
 −労働時間の上限に対する権利と安全衛生に対する権利−
 

話題提供者 有田 謙司 (西南学院大学法学部教授) 

 ミニ講座の第9講は3月31日(土)午後、山口大学元教員の有田さんを話題提供者に迎え、山口大学構内で開催されました。以下、有田さんの話題提供:

 労基法でカバーされていない個人事業者を含めて働く人びとの人権として問題を捉えている。わが国では労基法は憲法27条2の規定に基づいているが、あいまいさがある。そこで、1966年に国連で採択され1979年に批准している「社会権規約」の労働条件、並びにEU基本権憲章の労働条件の規定を元に、労働時間の上限に対する権利・安全衛生に対する権利を基本権として捉えたい。
 すなわち、憲法27条の2を条約に適合するように解釈し、立法すべき。また、安全衛生に関する権利は基本法として可能な限り全ての働く者に保証されなければならない。
 政府は働き方改革と称して今まさに法案を出そうとしている。この改正法案要綱の決定過程は極めて短期間であり、根拠となる実態データの不備から企画業務型裁量労働制の拡大はとり下げた。しかし高度プロフェショナル制度の創設をはじめとして大きな問題点が残されている。@労働時間の上限に対する権利が保障されていない。むしろ必要なのは業務量の適正化をいかにして確保するかである。A本来必要な制度や法制度が創設されていない。勤務間インターバル制度も努力義務にとどめている。B業務のアウトソーシングが進む中で個人就業者の基本権の保障を考えていない。
 そもそも、労働者に有利な働き方改革のほとんどは現行法の下でも政省令の改訂により達成できる。労働者の人権・基本権としての健康という厚労省的視点が欠如し、現政権の諸政策で特徴的な経産省的な考え方が前面に出ている。
 質疑では労働組合の役割の重要性、モニターリングの必要性などが話されました。


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