ミニ講座 YU学び舎第11講(2018年7月1日) 概要
吉野源三郎原著「君たちはどう生きるか」を考える
 

話題提供者 加藤 碩 (山口大学関係者九条の会) 

 吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」が発刊された1937年7月から80年を経て、 羽賀翔一の「漫画 君たちはどう生きるか」が発行されると爆発的な売れ行きで 250万部を越えて普及している。 このことをどう考えるのかというのが第 11 回ミニ講座の主題であった。
話題提供者の加藤碩氏(山大関係者九条の会)は漫画版 250 万部突破の軌跡を追い、 読後感想が寄せられている出版元のマガジンハウスの編集部に電話で問い合わせたことも披露。 次いで吉野の原著の狙いを 1967 年刊「ジュニア版 吉野源三郎全集 T」から紹介。 1935 年に山本有三編集の少国民文庫が発行され、その最後の配本が「君たち はどう生きるか」であったこと。 発行された1937年7月には盧溝橋事件が起き、わが 国が戦争へと全面突入した時代で、 自由主義的なことを執筆することすら困難であったこと。そこで、山本や吉野は少年少女に 「偏狭な国粋主義や反動的な思想を越えた、 自由で豊かな文化のあることを、何とかして伝え」ようとしたのだと解説した。
加藤氏は作品の概要にふれ、おじさんの手紙の中ではゴチックで著者の主張を述べ ようとしていることも紹介。 そして、80年前の著作が、なぜ、いま人びとを引きつけるのかを次のように考察した。 @いじめや個性の抑圧など今と変わらぬ青少年の悩み を扱っている、 A1930年代と今日の全体主義的発言の横行との類似性、 B自由、平和 を求める若者や国民の今日的意識の高まり、 B「ポスト真実」と言われる時代の風潮 への疑い、批判の顕れ、・・・
そして、最後に「君たちはどう生きるか」を媒体に、若者たちとの対話の和を広げよう、と訴えて、話題提供を締めくくった。
ミニ講座の参加者は 10 数名と少人数であったが、久しぶりの 20 代の参加者含め、 活発な意見交換が繰り広げられた。


もどる