ミニ講座 YU学び舎第12講(2018年9月23日) 概要 |
資源を考える |
話題提供者 加納 隆 (山口大学名誉教授、元理学部教員)
ミニ講座の第12講は9月23日(日)午後、山口大学構内にて、資源地質学が専門の加納さんが「資源を考える」として話題提供を行いました。以下、加納さんの話題提供:
富をもたらす資源をめぐって人(国)は争い、環境を破壊する。そして、地球は有限だから資源も有限だ、地下資源もやがてなくなるのだろうか?この問題について、話題提供したい。
最初に過去に訪れた国内外の10数カ所の鉱山の開発史と現状を写真で説明。わが国では明治〜昭和の鉱山資源が工業化に大きく貢献したが、現在も採掘されているのは1カ所のみ。アフリカ大陸には大きな資源が残っているが、それが紛争の原因となり、住民の幸福にはつながっていない。
鉱物資源は過去のある地質時期に生成されたものであるが、それが「資源」であるためには採掘可能、採算が取れる、含有量が一定割合ある、の条件が必要である。高価な資源であれば低品位でも採掘するので、埋蔵量としては地球規模では膨大となる。ある資源が枯渇してくると代替となる資源が開発される。その例がシェールガス・オイルで、世界各地に埋蔵しているが、水圧破砕法という乱暴な技術開発で採算が取れるとなり、石油価格変動の調節役として供給されている。
新しい資源開発には新たな問題が発生する危険性を無視してはいけない。メタンハイドレートが脚光を浴びているが、開発に失敗すると、メタンガスの大量放出、地球温暖化の危機がある。地球環境のバッファとなっている深海の開発はくれぐれも慎重でなければいけない。
ニュートリノの研究で脚光を浴びている神岡鉱山、自分の研究の原点である鉱山だが、ここには膨大な量の残滓が積まれていて、万一、ダムが決壊すると下流の富山市に壊滅的な被害が出ることを恐れている。
資源問題の解決の鍵は、それを解決しようと頑張る人材の育成にある。人材は自分自身が品位を上げることができる再生可能な無限の資源である。何でもかんでもシミュレーションという風潮があるが、一番肝心なのは現場で現物を手にとって学ぶことだという信念で、定年後も鉱物標本室の整備に力を注いでいる。
質疑では鉱山採掘跡地と残渣処理の実態、資源開発に伴い環境汚染、技術継承・人材育成の困難さなどが話された。