ミニ講座 YU学び舎第13講(2018年11月18日) 概要
不思議な話 − 誰から何を守るのか分からないミサイル防衛
 

話題提供者 立山紘毅 (山口大学教授、経済学部) 

 ミニ講座YU学び舎の第13講は11月18日に山口大学大学会館でかい際され、立山紘毅教授(山口大学経済学部)が「不思議な話‐誰から何を守るのか分からないミサイル防衛」という話題提供をおこない、45名を超える参加者で活発な議論となりました。

 立山氏は冒頭に、昨今の「国防論議」では「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって」、とりわけ「なぜ、どうやって」の議論が欠けているのが問題である、ミサイル攻撃から守るだけというのは本当か、と指摘しました。
 海上自衛隊のイージス艦では、有効な迎撃対象はせいぜい8目標であり、1艦あたりに装着されている迎撃ミサイルSM3は6〜8発(1発が30億円)である。もしわが国が実際に攻撃されれば弾が足らない。「たまに撃つ弾が無いのが玉に瑕」と言われる始末。イージス・アショアを導入する以前にすることがあるのではと自衛隊内部からも声がある。
 つぎにイージス・アショアには安全性の疑問がある。電磁波の影響と、SM3のブースターや2段目ロケットなどの落下の問題。軍事機密と言うが性能が似ていると思われるJAXAのSS−520ロケットの落下水域は極めて広大に設定せざるを得ないことをみると、SM3のブースターを演習場内に落とすなどとはどう考えても無理である。
 むつみ(萩)と新家(秋田)の2カ所にイージス・アショアを設置して日本全土を守ると言う。しかし、防衛省の描いた防護範囲やミサイルの射程1500kmの円をみると、第1次世界大戦後の日本帝国の支配図をカバーしている。中国やロシアの配備ミサイルを射程圏に入れていると相手側からは見られる。従前はアメリカが矛で日本が盾であると言っていたが、日本が矛を持つと言われかねない。弾道ミサイル防衛への対処手続きを見ると防衛大臣の命により自衛隊の部隊が対処できるのであり、もはや専守防衛の域を出ていると言われよう。
 次に、「自衛権」とは何かについて議論しよう。似ていると思われるものに「正当防衛権」があるが、これが成立するかどうかは裁判所が判断する。一方、自衛権を判断するのは自国である。そして今や安保法制の下、他国を守る集団的自衛権が発動できることに注意しなければならない。「どうやって、誰のために」「誰から」守るのか?相模補給敞に米軍のミサイル防衛司令部がやってくるし、与那国島に出来た自衛隊基地に米将兵がやってきている。アメリカは中国の脅威に対処するのにイージス・アショアは望ましいと明言している。
 ところで、わが国の防衛予算は増加を続けており、FMS(対外有償軍事援助)の制度で、言いなりの価格で前払いをさせられる。金はアメリカに行ってしまって日本国民には戻ってこないのが防衛予算となっている。
 安全保障は軍事力だけでかなうものではない。食糧自給も重要なファクターだ。わが国では自給率は40%に落ち込んでいる、同盟国から輸入すればよいと言うが、そんなものではない。実は農業人口が200万人になっているにもかかわらず、自給率40%というのは極めて効率がよい農業生産が出来ていると言うことでは無いか。Uターン、Iターンがむつみ地区でも顕著という。まだまだやれることはあるのではないのか。どんな生活を営んでいきたいのかを考え、住みやすいまちと地域づくりに知恵をだそう。わが国は憲法前文で積極的平和主義をうたっていることを確認しよう。

 このような立山氏の話題提供に対して、質疑や、萩でのイージス・アショア反対運動の拡がりの紹介や、連帯した運動の訴えなど、活発な議論がかわされました。


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