ミニ講座 YU学び舎第17講(2019年10月20日)
石炭火力発電所と環境アセスメント
 

話題提供者 関根雅彦さん (山口大学教授、工学部) 

 原発稼働停止と電力小売り自由化進行のもと、全国でいくつもの石炭火力発電所が計画されている。 宇部市でも山口宇部パワー(大阪ガス、電源開発、宇部興産の3社が出資)が120万kWの計画を2015年に発表した。 環境影響評価法では事業者による配慮書、方法書、準備書、評価書の作成の各段階で外部からの意見、市長・知事等および環境大臣の意見が出される仕組みになっている。
 今年度3回目のミニ講座では河川環境の保全や干潟再生などに取り組んでいる関根雅彦さん(山口大学工学部教授)から環境アセスメントの歴史と概要の説明に続いて、宇部市の環境審議会環境影響特別部会の審議を踏まえて話題が提供された。 環境配慮書に対して市民からの意見を募集したが市の広報に募集記事が載っただけで、ほとんど出なかったこと、大気汚染やCO2増加を危惧する審議会の具申もあり、自治体や環境省から懸念が示されたこと、など。
 その後、アセスメントの流れで準備書に対する市長や知事の意見提出まで進んだ段階の2019年4月、大阪ガスが撤退を表明した。 電力小売り自由化の中で価格競争が激化し、将来にわたって投資回収のめどが立たないとして石炭火力発電計画はとん挫している。 全国的にもCO2削減の圧力の下で大型の石炭火力発電所計画の中止が相次いでいる。 国際的にはわが国よりはるかに高い比率で石炭火力発電を行っている国もあり、ベースロード電源として2030年に原子力を22%の割合というのでよいのかと問題提起があった。
 ミニ講座には山口市民だけでなく宇部、防府からも総数20名の参加があり、熱心な質疑が行われた。 関根さんは特別部会で承認された市長宛の報告書案の一部が委員長にも無断で削除されたという話を披露し、委員会に任せず市民の声を結集することの重要性が指摘された。


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