むつみ自衛隊演習場をミサイル基地とすることに反対する
一昨年来、北朝鮮は国際世論を無視して核爆弾と弾道ミサイル発射実験を度重ねてきた。
これに対して米国主導で経済封鎖が強化され、極東の緊張関係は一気に高まった。
北朝鮮からの弾道ミサイルを打ち落とせという世論が増長される中、昨年12月、政府は
弾道ミサイルを迎撃するイージス・アショア2基をアメリカから導入することを閣議決定した。
その後、今年4月の南北朝鮮首脳会談をへて、6月12日の米朝首脳会談では朝鮮半島の非核化を
促進するとの共同声明が発表された。トランプ米大統領は核兵器廃棄の交渉中は米韓合同軍事演習を
中止すると表明し、わが国では菅官房長官が「いつミサイルが向かってくるかわからない状況は
あきらかになくなった」として、6月22日には住民参加型のJアラート避難訓練を中止すると発表した。
朝鮮半島の軍事的緊張が平和的に回避できる可能性が期待されている。
こうした状況の変化にもかかわらず、防衛省・自衛隊は6月1日に山口県とむつみ演習場地元の萩市に
イージス・アショアを説明したのに続き、17〜19日に3箇所での住民説明会と市・町議会議員への説明会を
行った。住民や議員からは何故今、ミサイル基地が必要なのか、住民の生活と生命への影響を危惧する発言が
相次いだが、納得できる説明はなく、防衛省は既定方針通り立地調査を急ぐ姿勢であると報じられている。
イージス・アショアを設置することは、移動式の防空システムを必要に応じておくということを越えて、
近隣諸国の領域に達するミサイル基地を恒久的に造営することである。第2次安倍政権になってから、
内閣の手で解釈改憲が行なわれ、集団的自衛権行使を可能とする法整備、そして武器輸出3原則の制約を
なくし同盟国への武器輸出を解禁、などが立て続いている。わが国と国民の生命・財産を守る「専守防衛」の
考え方を変えようとする好戦的な流れの中でのイージス・アショア導入に危惧を抱かざるを得ない。
根拠のない経済効果に惑わされるわけにはいかない。防衛省・自衛隊の一方的な安全宣伝ではなく、
県や自治体は客観的な科学的検証を自衛隊や軍事産業と関わりのない第3者によるチェック機関を
機能させない限り、住民の納得は得られないであろう。平時でも電波障害や、環境破壊が懸念されている。
いったん戦火が開かれると地元だけでなく県内広い領域が真っ先に攻撃を受ける基地周辺地帯に変わることになる。
迎撃ミサイルを発射しても、撃ち損ないもあれば、破壊された残骸や危険物質の落下がある。
もっとも安全な方策は軍事力増強の力によるのではなく、戦争とならぬように国際世論を背景に
交渉で解決することである。
わが国の平和と住民の安全、繁栄を願って、日本科学者会議山口支部は、むつみ演習場への
イージス・アショア基地建設に反対を表明する。
2018年7月6日
日本科学者会議山口支部幹事会
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